Miroslav Vitous:Infinite Search(1969, Embryo)
A1. Freedom Jazz Dance
A2. Mountain In The Clouds
A3. Epilogue *
A4. Cerecka *
B1..Infinite Search
B2. I Will Tell Him On You
B3. When Face Gets Pale
Miroslav Vitous (b), Joe Henderson(ts), John McLaughlin (g), Herbie Hancock(el-p),Jack DeJohnette(ds, except *), * Joe Chambers : drums
扉の向こう
先日、といっても夏頃に買って、放置してあったLPレコード。CDでは持っているのだけど、本当は「あの」ジャケットが欲しかったのだ。そんなのが幾つあるか知らないけど、穴あき窓がある白い扉が表ジャケット。ヴィトウスの左眼が「窓」から覗いている。その扉を開くと黒い紙にヴィトウスの顔が。
ただそんなことだけなのだけど、昔から気になっていて、ディスク・ユニオンの中古LPコーナーで随分安価だったから、手にしたのだ。
昨日はアレサ・フランクリンのLPレコードを聴いた話を書いたら、ネットやら酒場やらで声をかけられて驚いた。結構好きな人は多いのだ。アノ頃のソウルはいいのだ、本当に。ボクは、あのような「真性グルーヴ」を敬遠していたので、イイ年になってから謙虚に楽しむことにしたのだ。
ジャズを聴きはじめてから長く愛聽していた「違う種類のグルーヴ」の典型的な一作はコレ。ボクの根っこに染みついたジャズとか、グルーヴって音にするとこんな感じ。黒い感じでは勿論なくて、そう地に立つグルーヴではなくて、頭頂から天蓋に音が抜けていくようなグルーヴなのだ。そんななかで、弦が唸るヴィトウスのベースの心地良い異質感がとても凄いし、気持ちよい。欧州の音楽感覚がジャズに迎合せず、ジャズと止揚させると、こんな感じになるのだ。今、聴いてもやっぱり凄い。それに、マクラフリンの音、ヒトの感情的な面を削ぎ落とした無機的なソロがアナーキーな音空間にふさわしい。
ボクがハービー・ハンコックが凄いな、と思うのは、こんな「白い音世界」のなかでは、まるでザヴィヌルのようなフェンダーローズを弾いていて、上に抜けていくグルーヴを見事につくっていること。才人だなあ、と思う。同じコトをジャコのデビューアルバムでも思ったけど。デジョネットもまさにそう。彼のシンバルワークの冴えは凄い。
そう、ボクが好きな70年代のジャズの玉手箱なのだ。このアルバムは。
やや残念なのが、やはりヘンダーソンが合わせ切れていないトコロ。努力が見えるだけに、気の毒。彼の70年代のポジションが見事に見えてくる。だから、70年代はウェイン・ショーターなんだよなあ、と納得してしまった。
そう、ザヴィヌルのアルバム以上に初期のウェザー・リポートが持っていた「ある種」の気持ち良いグルーヴ感はコレなんだよな、と堪能すべきアルバムだと再認識したのだ。
と、ここまでLP1枚聴き終わるまでに書いてしまうのだから、やっぱり好きな音なんだろうなあ。
このアルバムがなかったのでヴィトウスが入った初期のウェザー・リポートをどうぞ。