K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

金澤・長町「オヨヨ書林せせらぎ通り店」 内田百けん*全集を手にした


 

 長雨の後、土曜の宵時分にようやく上がった。少し体を動かす代わりに自転車で用事を片付けついでに、泉野の隘路をぐるぐると走った。そして櫻坂を下りようか、蛤坂を下りようか、少し考えたのだけど、旧い往還の空気を感じたかったので、鶴来街道を上って蛤坂を下りた。櫻坂を下りて行くのは竪町にある、蛤坂を下りて行くのは長町にある、どちらもオヨヨ書林。だから、蛤坂を下りて新橋の袂を曲がって黒田庄用水沿いに自転車を走らせてから、オヨヨ書林のせせらぎ店に着いた。もうすっかり真っ暗なのだけど、走りはじめに頬に当たっていた雨ももう上がっていた。

 最近はLPレコードばかり蒐集していたので古書店は久しぶり。日本の小説に欲しい本が沢山あって、500〜800円の手頃な値段。なかなか楽しく古書を手に取ったり、戻したり。澁澤龍彦「ねむり姫」、荒木陽子「愛情生活」(このあたりはエロスもの)、森敦:酩酊船(なんと晩成の作家と云われた彼の22才のデビュー作)、小川国夫「青銅時代」(あの独白のようなスタイルが案外好き)を手にした。

 そして頭をあげて眼に入ったのは内田百けん*全集。この数年、手頃な価格のものを探していた。月報が一つ欠落しているらしいのだけど、とても値頃感がある。本を箱から出して確認すると、狙い通り旧仮名遣い、正字体。

 まさに、この味を食べたくて、探していた訳。小躍りしてしまった。小さな鞄で10kgくらいある全集を持って帰る訳にはいかないので、取り置きを御願いして、自宅に戻った。登山用の45リットルのリュックサックを背負って、真っ暗な中、古書店に戻る。そんな訳で、この本がボクの家にやってきた。

 時折、全集を入手するけど読破にはほど遠い。宮澤賢治全集、猪木直道、網野善彦折口信夫...皆、長い眠りにはいっているなあ、と反省。もう先は長くないのだから読み始めなきゃ。

 店では少々解せない不思議な話(ボクにとって)があったのだけど、それは割愛。音楽は一息つけて、本を読まなきゃ。短い秋が終わって、長い冬が来るからね。

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* 「百けん」の「けん」は門に月。残念ながらgooでは表示されない。