K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lyle Mays: Solo Improvisations For Expanded Piano(2000)


 もう夏がはじまった、と思っていたら、梅雨になった。そして肌寒い朝。音をたてて時間が逆流するような感覚を覚えた。

 そんな時、ほんの少しだけど現実的な感覚から、現実が離れてしまうような不思議な時間を過ごす。独りで事務所で仕事をしていると、何処かへトリップしているような。

 そんな一日を過ごしているのだけど、無限の巡回モードで鳴らしてしたのがラリル・メイズの2000年のソロ。Expanded Pianoというシンセサイザとピアノを合わせたような楽器のソロ。捉えようのない時間によく溶け込むような音。音の芯がなくて、一つ一つの音のvectorが散乱しているような、そう流れる大気のような音楽。

 最近はパット・メセニー・グループでの彼の活動を聞かない。どうしたのかな、と気になって彼のアルバムを調べたら、これが最新作。最初の二作がパット・メセニー・グループのなかでの彼の作風を純化したような清澄な感じのフュージョンアルバム。第三作がピアノ・トリオと音が単純に、そして深化していくような感じだったのだけど、13年遅れて聴いた「最新作」は、その方向性をより突き詰めたものだった。

 実際の所、彼の今、は全く知らないのだけど、音の極北にまで出かけてしまって途方に暮れたのかな、とか勝手に思ってしまった。

 明け方、浅い眠りの中でボクにしては映像的な夢を長時間見たのだけど、その不思議な感触を再び味わえるような「環境音楽」をずっと聴いていた気持で、雨の1日を過ごしていたのだ。

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 Lyle Mays: Solo Improvisations For Expanded Piano(2000,WB)
   1. This Moment         
   2. Let Me Count The Ways         
   3. We Are All Alone         
   4. The Imperative         
   5. Procession         
   6. Black Ice         
   7. Origami         
   8. Lightning Field         
   9. Locked In Amber         
  10. Long Life

 Lyle Mays(p)