K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

菊地雅晃: on forgotten potency (2012) 最近、中毒的に聴いてのは

菊地雅晃: on forgotten potency (2012, Cerbeta)
1. Potency (菊地雅晃 )13:54
2. Aqualine1987 (菊地雅晃 )12:11
3. Conjecture (菊地雅晃 ) 11:40
4. Fluctuation (菊地雅晃 ) 12:21
5. Estol (菊地雅晃 )4:53
6. Chan’s song (Herbie Hancock, Stevie Wonder)12:16
菊地雅晃 (contrabass, effects, dub mix), 松村拓海 (fl, bass-fl, effects), 坪口昌恭 (analog synth, el-p, org, vocoder, etc.), 藤井信雄 (ds)
録音:2012年9月14日、15日

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最近、中毒的に聴いているのは坪口昌恭のRadio Acoustique。そのなかで、菊地雅晃のベースの音が音響以上に響いていて、気持ち良い。

で、このアルバムを思い出した。フルートの松村拓海は入っているが、Radio Acoustiqueを裏返したようなアルバムで、ベースが前面に出る頻度が上がって、背景で入るキーボードもすごく良し。

だから、これも中毒性が強そう。曲とフルートが菊地雅晃が好きな「午前3時」の味を出していて(本当か?)、そこの味わいが単なる裏返しでない、やや鋭角を削いだような柔らかさを出していて、この2枚を回していればよい、ような気分。

年の瀬にほっこり、させられる。

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[2015-12-16] easyな意味でのfusion music、ではない

 最近なんとなく(ボクのなかで、行ったことないけど)有名なジャズ喫茶「ロンパーチッチ」 のブログ(レコードが沢山アップされるから愛読)を読んでいたら、

 

(引用)鍵盤奏者が時代がかった音色のシンセを弾いていてなんとも聴くのがツラい。やっぱりジャケ裏を眺めて、鍵盤奏者の担当楽器が「piano」「organ」「electric piano」なら買ってオーケー、「keyboard」だったら黄色信号、「synthesizer」だったら手を出しちゃダメ、という原則はしっかり守らないと。

 

の記載が。思わず膝を叩いてしまった。1970年代あたりのレコ−ド、それもフュージョン盤はそうなのだ。シンセサイザーの音色の新しさ、だけで面白がって入れたものは、時代とともに錆ついてしまうのだ。かのアイヒャー御大監修のECMでも、そんな例は無くはない。

昨夜、届いたCDをひっくり返すと、やたりsynthesizerが。どきっ、としたが、2000年代以降はそんなルールは必要ない。シンセサイザーや打ち込みも熟れて、いい意味でただの楽器になっている。

 それはさておき、本題:

今、聴かなきゃいけないなあ、と思っているのは今夏、あの世へ去った菊地雅章のアルバム。ススト以前のLP盤はレア盤を除きまあまあ入手し、今はCD。CDでも入手が難しい盤も多く、丹念に探そうと思っている。そんな探索の過程で、一文字違いのベース奏者、彼の甥、のアルバムが出てきた。最近の奏者のことは、あまり知らないのだけど、何かひっかかり、があって菊地雅章のアルバムと一緒に注文。一緒に届いた。

 はじめて聴く奏者、じゃないのだけど、以前入手した菊地雅章のSLASHは何となく馴染めなくて放置。実質、はじめて聴くようなものだ。所謂、フュージョンなのだけど、easyな意味でのfusion music、ではない。もう少し重層的な感じ。フルートがとても爽やかなソロを奏でるのだけど、毒があるようなベースライン、浮遊感を美味しく流す"synthesizer"(大丈夫!)、うまくヨロけるドラム。併走して流れていく音がうまく紡がれて全体の風景を形造っていく。

 表面的には軽いfusionのようで、聴いていくと、かなりの中毒性がある。音量を上げると特にそうだ。ふっと、マイルスのアガルタ、1枚目のB面に流れていくソニー・フォーチュンのフルートと重なった。アレは廃墟のような焼け跡のような荒涼とした場所に、安らぎの音が流れるような光景、アムトラックから見たニュージャージーの廃墟のような工場地帯、を思い出す。コレは、奏者が主張するような都会の夜、の音であり、仄かな安らぎがある。

  ということで、菊地雅晃さんが気になってきて調べるとiTunesに他の音源が2つ。その実験的な内容を聴くと、あの世に行ったオジさんに劣らじ、なかなかの音遍歴の方なんだなあ、とますます興味がでてきた。

ON FORGOTTEN POTENCY

ON FORGOTTEN POTENCY

  • アーティスト:菊地雅晃
  • 発売日: 2012/12/26
  • メディア: CD