今日は仕事場で依頼された原稿を書いていた。休みなし。そんな日はapple musicのうえで知らない音源を探索している。
一日の最後で捕まえたのは、このアルバム。しばらく、先日取り上げたKoanのドラマーのアルバムとは気づかなかった。記憶力が減退している。慌てて、Bandcampからダウンロードして、聴いている。
Koanと同じ「柔らかな音響空間」のなかで、Koanよりも更に広がった音の心象風景が淡く、淡く、流れていく。ドラムは背景のなかにあって、更に淡い。浮遊する、ということではない。墨絵のような淡い、単色の空間。削がれた音が美しい。どこまでが記譜されていて、どこからが即興、ということも関係なくて、Tyshawn Soreyの稠密な意図により、この淡い音空間が構築されたに違いない。
そして気がついた。晩年の菊地雅章、Paul Motianに連なる音、の延長にあるのではないか。ピアノとドラムが織りなす音の印象がとても近い(印象が近いのであって、音が同じということではない)。その先、21世紀のジャズの先端、に出ていこうとしている彼らの歩いた軌跡を聴いているようにも感じた。
ECMを想起させる音空間なのだけど、ボクはむしろ違い、のほうが印象的である。柔らかな、無作為のような、自然な音なのである。強調されたような残響ではない。自然さに強く惹かれている、のである。
すばらしい。
Bandcamp:
apple music:
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Tyshawn Sorey: Alloy (2014, Pi Recordings)
1. Returns(Tyshawn Sorey) 7:58
2. Movement(Tyshawn Sorey 19:52
3. Template(Tyshawn Sorey 7:16
4. A Love Song(Tyshawn Sorey 30:53
Tyshawn Sorey(ds), Christopher Tordini (b), Cory Smythe(p)