往来トリオでの演奏に惹かれ、入手。
ECMの諸作のようなジャンルや地域が融解した音楽であって、そのような「何ものかであること」というタグ付けの紐(restriction)のようなものから解き放たれた音。何かであって、何でもないような、その感覚が与える開放感は大きい。音が風を伴い吹き抜けていくようだ。その意味での心象的な浮遊感、が心地よい。(漂うような音、意ではない。)
コントラバスは往来トリオで惹かれた音そのもので、重厚な胴体の共鳴音、弦の振動音そして時折はいる不規則な揺動、そのようなものが絶え間なく時間を変調し続ける。箏の音はウードのような音色で、「何ものかであること」からの遠心力を与え続ける。ヴィオラの音が時間を遡行するような懐かしさを。それらがコントラバスの舟の上で浮かんでいる。
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齋藤徹: 朱い場所/Space for Vermillion(2008, Travessia)
1. 山羊のジュンバ~蓮の事情
2. 金羊毛とミモザ
3. マラケッシュ
4. 青鬚マントラ
5. 舟唄
6. タフタのハバネラ
7. 水無川
齋藤徹 (contrabass), 西陽子 (箏), 佐藤佳子 (viola)