K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

佐藤允彦: Deformation(1969) 背景音と併走しながら、それを抱合するような演奏

Deformation

このあたりのレコードは高価なので、CDで入手。それで良かった。十分満足できる音質だった。

「事故」前の富樫雅彦を聴きたいと思って、幾つかの音源を聴いてみたが、佐藤允彦、荒川康男、富樫雅彦のトリオに圧倒されてしまった。フリージャズ、という内容ではないが、同時期の富樫雅彦菊地雅章ゲイリー・ピーコックの銀界同様、ECM的ジャズ(多分それはブレイ的ジャズでもあったと思う、1970年代のECMでは)をECMよりも早い時期に体現している。

このアルバムはライヴ。それも様々な背景音(電子音、室内楽、秋田の老婆が唱える「おしらさま」など)を流しながら、それと併走しながら抱合するような演奏。結果的には、それは触媒に過ぎず、トリオの演奏が全面に出、そのアクセントとして背景音が耳に残る程度、絶妙な配合比率だ。そこは観念過多ではなく、彼らのジャズの感覚が肉体を通じて音として噴出している。そんな意味で、宮沢昭の「いわな」、もそうだ。宮沢昭を触媒とし、トリオの音が走っている。

このアルバムで感じたのは荒川康男の存在感。このアルバムの芯、になっていている。トリオとしての一体感、のようなものの要、じゃないかな。荒川康男の実に面白いインタビュー記事が出ていたので、リンクを貼っておく:

確かに1969年頃に日本のジャズの核、のようなものが形成されたんだろうな、と思う。
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佐藤允彦: Deformation(1969, 東芝Express==>BRIDGE-044)
1. Opening
2. Movement No.1
3. Movement No.2
4. Intermission
5. Movement No.3
6. Movement No.4
7. Closing
佐藤允彦(p)、荒川康男(b)、富樫雅彦(ds)
Recorded Live at Sankei Hall, July 4, '69