Steve Lehman: The People I Love (2019, pi recordings)
1. Prelude 01:40
2. Ih Calam and Ynnus 05:54
3. Curse Fraction 05:13
4. qPlay 04:24
5. Interlude 01:04
6. A Shifting Design 03:57
7. Beyond All Limits 07:52
8. Echoes / The Impaler 05:12
9. Chance 05:30
10. Postlude 00:54
Steve Lehman(as), Craig Taborn(p), Matt Brewers(b),Damion Reid(ds)
-----------------------------------------------------------------------------------
珍しく、ほやほやの新譜。心待ちにしていたスティーヴ・リーマン。ピアノにテイバーンを配しているとの事前告知で期待が高まっていた。
上手く書けないのだけど、そのような期待とは関係のない出来。仕事しながら、bandcampからDLして聴いていると、テイバーンは聴こえてこなかった。リーマンのソロ、そしてリーマンと同期したドラムの高揚感が伝わる。つまりテイバーンが聴こえない。録音が若干オフなこともあるが、リーマンに圧倒され気持ちがそっちにしかいかない、ことかなと思っていた。
それから何回も聴いている。前回のアフリカの奏者とのアルバムもそうなのだけど、素材としての「環境音」が、前回のアフリカからテイバーンに代わった、そういうことなんだと思う。
テイバーンはあの鋭い美音で、音場の隈取りのようなことを行う。現代音楽っぽい、硬質の旋律がすごくいい。そこから一定の距離をとって、リーマン・トリオが吹き抜く。必ずしも高速のフレーズを吹きまくっている訳ではない。高速のフレーズを吹いている部分もあわせ、とても静的な印象になっている。そこが面白い。
美音の籠のなかで、軽い不安を誘うような不穏な音が漂う。静的な印象なのだけど、音そのものは聴き手に浸透し、心象に強い作用を残す。その作用が発する味は、強いジャズの味であり、その点において過去のアルバムと大きな違いはない。ダミオン・リードが叩き出す太く、多様な律動のうえでのリーマンの求心的なソロの美味しさは格別。そこからかなり距離を置いたテイボーンの装飾音が、サックスの音の強度を高める。このあたりの作曲の妙、も美味しい。
好きだった1970年代のジャズを真っ直ぐ進化させたような音の在り方、が何か凄く嬉しい。同時にCP unitの新作もDLしたのだけど、その違いにニヤニヤしながら聴いている。楽しいなあ。