K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

石田幹雄: Turkish Mambo

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石田幹雄: Turkish Mambo (2008, FIVE STARS RECORDS)
1. Turkish Mambo 1 (Lennie Tristano)
2. So long Eric (Charles Mingus)
3. Requiem (Lennie Tristano)
4. Salt peanuts (Dizzy Gillespie)
5. Parigian through fair (Bud Powell)
6. I didn't know what time was (Richard Rodgers)
7. Milestones (Miles Davis)
8. For Carl ( Leroy Vinnegar)
9. I got rhythm (George Gershwin)
10. Waltz (Mikio Ishida)
11.Turkish mambo 2 (Lennie Tristano)
12.Amazing grace (Traditional)
石田幹雄(p),Matthias Svensson(b),本田珠也(ds)

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[2019-9-12] スタンダード曲と油断させて、なかなかの昂奮を与えるアルバム

石田幹雄は近作から聴いている。アヴァンギャルドな空気、といっても破壊的な音ではなくて、モンクやドルフィー、あるいは菊地雅章の音が含有している、アノ奇妙な空気を少し分けてもらっている奏者。打音と打音の間の沈黙からは、ECMのような「静寂」を狙ったような音空間もあるが、石田幹雄のピアノでは奇妙な空気を感じさせる。粒立つ音の照り、のようなものとの対比、が美味しい。

このアルバムは10年前のもので、そのような味わいはやや弱いが、音の粒立ちは存分に味わえる。自己陶酔的なものを削いだ、粒だった音が揺動しながらジャズを聴く愉しみを運んでくる。

大半がスタンダード曲ではある。しかし左右の手から放たれる音は、時として複雑な軌跡を描いていて、モダンジャズの名盤を想起させる内容ではない。今の音だなと知らしめている。

それにしてもベース、ドラムが実に素晴らしい。ピアノとベースが互いに不可分な部品のように音が嵌め込まれていて、時々刻々、嵌め合い形状が変化していく。大口純一郎トリオでの演奏でもそうだが、あの本田珠也の熱量が抑制的なサポートのなかで暴発寸前の活力を与えている。

スタンダード曲と油断させて、なかなかの昂奮を与えるアルバムなのだ。