K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Arthur Blythe: In The Tradition

Arthur Blythe: In The Tradition (1980, CBS)
A1. Jitterbug Waltz (F. Waller) 4:34
A2. In A Sentimental Mood (D. Ellington) 7:45
A3. Break Tune (A. Blythe) 3:03
B1. Caravan (D. Ellington, I. Mills, J. Tizol) 5:22
B2. Hip Dripper (A. Blythe) 4:35
B3. Naima (J. Coltrane) 6:44
Arthur Blythe(as), Stanley Cowell(p9, Fred Hopkins(b), Steve McCall(ds)
Engineer [Mastering] : Vladimir Meller
Engineer [Recording] : Doug Epstein
Mixed By – Arthur Blythe, Doug Epstein
Producer: Arthur Blythe, Bob Thiele
Recorded at Mediasound Studios, NY.

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1970年代後半、マイルスがお隠れになっていた時期、ハンコックのVSOPの成功でクロスオーヴァー一色からの「4ビート回帰」がSJ誌上に踊っていた、そんな時期にジャズを聴きはじめた。マジメに1年ほどSJ誌を読んでいたなあ。

そんなコンテクトのなかで、SJ誌に取り上げられたアルトサキソフォンの奏者が2名いた。いやもっといたかもしれないが、覚えているのが。一人はアーサー・ブライス、もう一人はリッチー・コール。ブライスはメジャーのColumbiaから、コールはメジャーでもないMuseからレコードが出ていた。結果、コールは日本で大ヒット、ブライスはそうでもなかった記憶がある。それでも、ともに餌箱の王者でオークションでも二束三文。

その「4ビート回帰」の証として、このIn The Tradition が取り上げられていた。当時、ブライスの面白みはチェロやウルマーのギターを加えた変態的歪んだ空間、にあると思っていたので、正統的カルテット(のように見える)In The Tradition は好み、ではなかった。

何十年ぶりかに聴き直してみる。とても良い。凄く良い。何が良いか、ブライスの管の音の強度。振幅的にはち切れそうな強度が、レコードに目一杯、コロンビアの丁寧な音響処理で詰まっている。凄い。それにスタンダード曲という纏のなか、音のスケールもまたはち切れそう。沸点寸前の音がレコードに繋ぎ止められている。AIRのホプキンス、マッコールもその熱い音を熱く支えている。それがスッキリした録音でくっきりと捉えられている。残念なのは、カウエルは精彩を欠くように思えて、録音もオフ気味。トリオで良かったように思う。In The Traditionという偽装(艤装?)に使われたような塩梅。

フィル・ウッズの魅力は速度に尽きるが、アーサー・ブライスの魅力は音の強度に尽きる、ように思える。だから録音の平均的なレヴェルが高いコロンビア盤は実に良いのだ。もう少し聴こう。

In The Tradition / Lenox Avenue Breakdown / Illusions / Blythe Spirit

In The Tradition / Lenox Avenue Breakdown / Illusions / Blythe Spirit