Stan Getz: Sweet Rain (1967, Verve)
A1. Litha
A2. O Grande Amor
A3. Sweet Rain
B1. Con Alma
B2. Windows
Stan Getz(ts), Chick Corea(p), Ron Carter(b), Grady Tate(ds)
Engineer: Rudy Van Gelder
Producer: Creed Taylor
Recorded March 30, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Engelwood Cliffs, New Jersey.
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チック・コリアの参加作は多数あるが、やはり初期のものに心惹かれる。咄嗟に思い浮かべるのはスタン・ゲッツのSweet rain。
RVGらしい?冴えないピアノの音なのだけど、そんなものを飛び越えて、レコード盤から清新な風が吹き抜けるアルバム。コリアの曲ではじまり、コリアの曲で終わる。
ゲッツの柔らかい音色と対峙するような鋭いピアノの音だったのだろうが、録音でややオフに、そして音色を殺してているのではないかと思う。だけど、コリアの音色や輝きを抑えることで、明確にゲッツに焦点があっていて、柔らかいようで豪胆なテナーに思わず惹き込まれる。コリア色の強いアルバムと思って聴き直したのだけど、ゲッツの圧倒的なテナー・サックスに聴き惚れて、気持ちの中でコリアに焦点があたらない、ということが意外だった。
そうではなくて、コリアが提供する曲LithaとWindowsの音世界に対し、ゲッツが見事に溶け込み、主役以外の何物でもないでもないことを見せつける、そんなアルバムなのだ。
[2016-08-28] VerveのRudy Van Gelder
ボクがよく聴くゲッツは2枚。間違いなく、ゲッツファンからすると外道ではなかろうか。ジルベルトとの1枚とコレ。要はジルベルトとチック・コリアを聴くための盤だからだ。それ以外も持ってはいるが、結局、聴いていない。
だから、このアルバムはコリアの曲、LithaとWindowsのリリカルな曲調とドライヴ感に浸る、という聴き方である。とにかく、コリアのピアノが格好良くて、Now he sings, now he sobsと並ぶ彼の代表的な演奏ではなかろうか。これらとECMの何枚かでコリアはいいかな、と思っている。
さて、このアルバムの録音はVan Gelder。持っているレコードはモノラル。当時のVerveでは案外遅くまでモノラルが出ていて、よく見かける。
当然の如く、素晴らしい音圧で楽しむことができる。ただ、芯のようなものなく、漂うようなゲッツのサックスの音色との相性は少し疑問がある。何か膜が被ったような感じにきこえる、のである。ゲッツの音色が聴き手であるボクに合わない、だけかもしれないが。またコリアのピアノの音もブルーノート風にイコライズされていて、期待しうる1967年の音には感じられない。同じVerveだと、モントルーのエヴァンスの時期が1年後。当時の「Hi-Fi」の水準と合わない、ように感じるのだけどどうだろうか。ECMの胎動期が2年後なのである。
プロデューサーのクリード・テイラーとはCTIでも付き合いが続く。だから時代遅れになった、ということでもないと思うが。
追記:
アンプが暖まってから再聴すると、これはBlue Noteサウンド的なゲッツのアルバムとしては十分な録音Qualityであると思った。しかし、コリアの演奏は1970年代を予兆させる清新さ、に溢れていると思う。そこにミス・マッチ感があるのだ。
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