Marc Copland: Haunted Heart & Other Ballads(2001, Hatology)
1. My Favourite Things 1
2. Crescent
3. Dark Territory
4. Greensleeves
5. When We Dance
6. My Favourite Things 2
7. Soul Eyes
8. It Ain't Necessarily So
9. Easy To Love
10. Haunted Heart
11. My Favourite Things 3
Marc Copland(p), Drew Gress(b), Jochen Rueckert(ds)
晴れたり曇ったり、暖かくなったり寒くなったり、風が吹いたり止んだり、気持ちが昂ぶったり冷めたり、そんな春(に違いない)日々。
この春の記憶、
何か所在のない無力感、図らずも頼みもしない旅に連れ出されたような、むしろ拉致に近い暴力的な感覚、
を忘れることはないように思う。そんなことだけが確信めいてある。
明治という時代のレジームが、大正という緩慢なる時代で毀損し、関東大震災で粉砕された、という事実がある。明治レジームに代わる国家革新の新たな国民意識の昂揚感が、マルクス主義との闘争のなかで戦争へのヴェクタを蹴り上げていった。
戦後昭和という時代のレジームが、平成という緩慢なる時代で毀損し、今回の大震災で粉砕された、ように感じられて仕方がない。復興への昂揚感も必要だ。その国民意識をどこに連れて行くのか。考えなくちゃいけない。国際的にも、昨年のG20に象徴されるように、「Pax Americanaの終焉のはじまりの年」として記録されるに違いないから。
そんなことに対するある種の無力感と過ごしているわけ。
そんな朝はマーク・コープランドの、砂糖を少しだけ入れた紅茶のような、仄かな甘口の音を聴くのも悪くない。ハーシュのような深い世界観を感じさせる人ではないのだけど、ピアノの響きがとてもいい。Sun RaとかSteve Lacyで手にしたスイスのHat Hutレーベルから、こんなタンビ耽美しているアルバムが出ているとは驚いた。ブレッカーとの共演アルバムを手にしてマーク・コープランドの良さに気がついた。
My Favourite Thingsを三回も弾いているのだけど、耽美係数を制御して酔わせようとしている魂胆。だけど砂糖入り紅茶では酔えない、のである。まあ気持ちの良い、綺麗なアルバムなので、ビル・エヴァンスやフレッド・ハーシュ好き向けの好盤であります。