K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Nora Sarmoria: Union Alta(2011) クルクルまわる音の色彩感に目眩する


 この2ヶ月くらい、なんだかあり得ないくらい忙しい日々を過ごしていた。へんな昂揚感のなかにいたのだけど、失速してきた。とても懐かしい感覚ではあるのだけど、体のあちらこちらから警報が鳴っているような感覚。少し休憩せよ、とのお知らせ。そんな訳で、早寝してあまり無理しないように過ごしている。前の仕事は厳しく、少し長い休みの度に気が抜けて、そんな状態になったので懐かしい感覚。余裕がある(と思っていた)今の仕事で、そうなるとは思いもしなかった。(そんな訳でブログの更新をゆっくりに)

 そんな不本意な感じの日々なのだけど、聴くものは日々聴いていて、今、一番注視しているのはノラ・サルモリア。先日紹介した「Fenix Espiral 」ですっかり魅了された。それから彼女のCDを集めてみた。国内外のdistributerのサイトに注文し、全9アルバムのうち、7アルバムまで入手。いささかバラツキはあるのだけど、どれも面白い。

 弾けるようなピアノと声、ときとしてエキセントリックですらあるのだけど、その音の色彩感が気持ち良い。ジャズとフォルクローレの境界線に奔放に漂うオトは本当に気持ち良い。カルロス・アギューレ一派のような耽美的な味はなくて、そのあたりは極めてあっさりしている。だから、彼女の茶目っ気をオトで楽しめばいいのだ。

 このアルバムが最新作じゃないかな。Orqueata de Musica Sudamericana(南米音楽オーケストラ)名義で2枚出ている。ノラがディレクターとクレジットされているけど、NoraによるNoraのための楽団と考えてよい。入手していない一枚もこのコンセプトじゃないかな。だから計3枚が大編成楽団の音楽。

 入手する前は何となく惰性で注文していて、期待はしていなかった。オーケストラは苦手。音が詰まりすぎていて、息が詰まりそうな感じ。オーケストラでなくても、とかく編成が大きな演奏は避けている。だからカウント・ベイシー・オーケストラのフレディ・グリーン(分かんないかな)とか、聴きたいオトが入っていないと辛い。例外なのはギル・エヴァンス・オーケストラで全く抵抗がない。ギルの編曲は奏者のソロが主体であり、そうありながら楽団全体の色づけがしっかり為されている。だからオーケストラであっても面白い。ギルがスコアを提供したジャコのビック・バンドもそうだよね。

 このNoraの大編成楽団のアルバムは少し違う。ノラの声とピアノを主菜とした晩餐のような音楽。その主菜を盛り上げるような素材として、実に多くのオトが添えられている。あくまでノラのオトのために添えられているのだ。彼女の声と管楽器のオトが調和したり、向き合ったりしているオトが隘路を駆け巡るように続く。曲調とか、編曲はめまぐるしく変わり、前作で登場した彼女の娘(じゃないかな)が再び登場し、弾けるような歌を披露していて本当に楽しい。力業の編曲。小編成のアルバムと比べ、クルクルまわる音の色彩感に目眩するような内容に仕上がっている。

 ジャズというプラットフォームの上に乗っかる辺境の音楽なのだけど、その果実の甘みをぜひ感じて欲しいと思う。音楽を聴くことの悦びが詰まった缶詰のような一枚だから。

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My Spaceで試聴できます。2曲目と3曲目がこのアルバム。

http://www.myspace.com/orquestasudamericana/music

Orqueata de Musica Sudamericana (Nora Sarmoria) : Union Alta(2011, Margarita)
 1. BOLIVIAN BUEY
 2. TREPAR POR LAS PAREDES - feat. Marcela Passadore
 3. CANTO LABRIEGO - feat. Liliana Herrero
 4. POBLADO DE DUENDES
 5. CHIRIGUARE - feat. Catalina Ward Sarmoria
 6. LOS CHANCHOS CORRERAN POR LAS PRADERAS - feat. Marcos Cabezaz
 7. LLEVO TUS SONIDOS
 8. ENAMORADA DEL MURO
 9. EONES
10. LA JARDINERA
11. CORAZONANDO - feat.Analia Sambuco
12. HUMUS
13. DOS SOLES
14. SARAMANI