K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Keith Jarrett: Sun Bear Concerts - Sapporo (1976) 音の記憶は薄いのだけど


 1976年11月18日の札幌公演。ピアノ ソロ。part I 40:59、part II 33:55 僅か1時間強の演奏。アンコール10:48を足しても1時間半に足りない。

 ケルン・コンサートのヒットの後、そしてボクがジャズを聴きはじめる2年半前。ジャズを聴きはじめた18歳の頃、京都三条の十字屋のレコード棚に大きく飾られたあの10枚組のLPレコードがずっと気になっていた。いろいろ聴きたい年頃だったので、結局、買わなかったのだけど。何かね、10枚組だと薄まっているような邪推もあったしね。

 この数年、キース・ジャレットを再び熱心に聴くようになって、何となくこのアルバムが気になって仕方がなかった。30年前の感情や感覚がそのまま蘇った。だからいつだったか、金沢のジャズ喫茶穆念でかけてもらったのが、この札幌公演。すっかり魅了されてしまった。ケルン・コンサートのように感情が吹きこぼれるような音の起伏はないのだけど、ピアノの響きはこちらのほうが良いように思える。とても滑らかに気持ちに流れ込んでくる。

 それにしても、齢半世紀を超えると音の記憶が薄い。かつてのように、一枚のアルバムを味わい尽くすような時間を送りたいのだけど、記憶力が許さない。だから水平線の向こうまで未知のものを求めるような、漂泊の心象のなかで音を探す。物欲と紙一重であることが、とても気になっている。だから、このアルバムの入手も随分と長い間迷っていた。

 音の記憶は薄いのだけど、一音一音を染みこませるような聴き方もできない。そうなのだけど、音を聴いたときの印象を少しメモにしておくことで、30年前と同じように楽しめないか、そんなことを思っている。そして最近、このアルバムを入手した。まだ札幌しか聴いていない。少しでも、印象が残るように。

 そんなことを考えながら、独り静かに過ごす週末もいいもんだ、と思う。