K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Ketil Bjornstad, Terje Rypdal : Life In Leipzig (2005) モノクロームの風景のなかで

 ボクは全く気にならないのだけど、北陸の冬が嫌だ、というヒトはまわりに多い。非北陸のヒトが多い仕事場なので。11月に入ると雷鳴が響き、幕布が落ちたように天と地のあいだが遮られる。それから数ヶ月、モノクロームの風景が広がる。朝は淡く白く煙ったような大気が流れ、夜は漆黒のなかで雪面が淡く光る。

 そんな単色の冬に良く合うなあといつも思うのが、テリエ・リピダルのオデセイ。1970年代のECMディストーションが強く効いたギターはジャズの語法から大きく逸脱しているのだけど、寒々しい寂寥感、は冬の朝に聴くとぴったりとした感じ。もっとも勤労意欲は落ち込んで、椅子に座り込んで、時間が止まってしまうのだけど。その代わり、雪の流れがとてもゆっくり見える。

 そんな音をもう少し聴きたくてリピダルのアルバムを幾つか手にしたのだけど、上手く合わない。数枚入手したところで、諦めてしまって久しい。多分に、あのオデッセイの背景色・トローンボーンの浮遊感が存外の効果を生み出しているのだと思う。

 久々に手にしたのはビヨルンスタKetil Bjornstadとリピダル Terje Rypdalのライプツッヒでのライブ。冷たい音色の彼らが紡ぐ空間はライヴということが不釣り合いなほど、観客を外に置いて冷たい。だから時々入る拍手や歓声に違和感を感じる。ビヨルンスタのピアノは思いの他、音数が少なく、その分美しい余韻で空間を満たしている。そのような少し空いた音空間がリピダルのモノクロームの音で満たされていく感じが、とても好みに合う。特にこのような季節の心象と重なる。

 最後の曲がライヴらしく盛り上がり、音の温度が急上昇することが残念なのだけど、彼らのライヴがこのようなクライマックスを迎える意外感を味わう、という意味ではそんなに悪い感じでもなかった、ことを付け加えたい。

同時期のワルシャワでのライヴ。様子は分かるのだけど、音は駄目。画像だけ。

 

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Ketil Bjornstad, Terje Rypdal : Life In Leipzig (2005,ECM)
1. The Sea V 8:01
2. The Pleasure Is Mine, I'm Sure 5:28
3. The Sea II 7:29
4. Flotation And Surroundings 6:42
5. Easy Now 4:35
6. Notturno (Fragment) 1:01
7. Alai's Room 1:38
8. By The Fjord 3:06
9. The Sea IX 5:23
10. Le Manfred/Foran Peisen 5:10
11. The Return Of Per Ulv 5:20
Ketil Bjornstad (p), Terje Rypdal(g)