K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

光と闇の接点に


南運動公園

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 この季節、街中には二回夕暮れがやってくる。陽が傾きやってくる夕暮れ。そして、あちこちの名跡に灯っている誘蛾灯のような光が落ちて、集まってきた人達がまた散っていく頃。街の中が本当に暮れていく頃、自転車のペダルを踏んで、観櫻に出かけた。

 そんな刻、櫻は光と闇の接点に在るような存在で、明るい側から見ると闇の入口のようでもあり、真暗な側から見ると光の入口のようである。光と闇、を生と死と読み替えてもよい。梶井基次郎のヴァースはその所以でもある。誘われて出て行ったボクではあるのだけど、眼に見えぬ艶めかしいものの気配を感じるように思えたのも、そんな肌寒い春の一刻の幻。

 金沢の南西の職場から漕ぎだして南運動公園へ。ここは淡い感じの櫻。その後は昔の住処を通って櫻坂へ。枝垂れ櫻が妖艶。犀川沿いの櫻を見下ろし、暫し微睡むような気分。坂を下って櫻橋を渡り21世紀美術館へ。相変わらず非現実的な空間。ライトアップが終わった兼六園からの人の波を避けながら、金沢城・石川門へ。祭りの後のような感じ。好ましい。

櫻坂の枝垂れ桜

21世紀美術館横の小径

兼六園

石川門

石川門

兼六園

 兼六園を抜けて橋場に向かった積もりが鈴見の方角に向かっていることに気付く。夜、自転車で駆け抜けると知らずと方角が分からなくなってしまう。慌てて、賢坂辻まで戻り材木町から橋場へ。この辺りからぐっと光が落ちて、闇の中に街全体が落ちていく。時折、鳥が鳴く。浅野川大橋から主計町へ。灯火が川に流れる。

主計町

 主計町から茶屋街を抜けて宇多須神社へ。鳥居をくぐると大気が重くなる。そして無音を聴くような感覚。柏手が大きく響き、本殿の硝子戸の向こうの灯火が揺れる。再び神域を離れると、軽くなったような感じとともに、一段と闇が深まる。観音坂の通りを詰めて地蔵堂を通り抜けると観音坂の階段。闇が大きく口を開いていた。

 常磐橋から再び材木町。賢坂辻から天神坂を駆け上り小立野台地に上がる。美大の横から福光屋のほうへ。慶恩寺の櫻は散った後。その後、二十人坂の櫻を眺めながら本多町へ下りて行った。光と闇の間を縫う時間を過ごした。多分、櫻が咲くこの時分に姿を見せる淵を覗くような感じだった。