数日前に、最近のチック・コリアにトキめかない、と書いた。1970年代末にジャズを聴き始めたので、お約束のようにキース、チック、ハービーのアルバムを結構な枚数買い込んだ。この3人のなかで、最も親しみやすかったのは、チック・コリアだったように思う。しっかりとしたドライヴ感があり、はっとするような美しい曲作り。ジャズの語法での演奏のみならず、RTFをはじめとするフュージョンでも、そのような印象は強かった。1970年代のうちに、いろいろなフォームでの、いろいろな音が出尽くした感があって、1980年代以降のアルバムを聴いても、出涸らし、のように感じてしまうのは残念なことだ。既視感が強いのだ。
だからワーナー後半からGRP移籍以降は、全く熱心に聴いていない。
だけど、彼のピアノの良さ、が好きなだけに最近のアルバムを聴き直してみた。
このLive In Moldeは、ほんとうに久々にいいな、って思ったチック・コリアのアルバム。北欧のTrondheim Jazz Orchestraとの共演。多分、オーケストラ側で選曲、編曲をやって、そこにチックを乗せたのだよね。だから1960年代後半から10年くらいの間に書かれた、ボクらが好きな曲が中心となっている。まず、そこが良い。オーケストラの編曲もヘンなヒネリもなく直球。そして管のなかで、次第にチックのピアノに焦点が合うような絶妙なオーケストレーション。
そう、なんだかなあ、と思わせる近年のチックの編曲よりも、彼自身のピアノが引き立つように出来ているように思う。きっと編曲者は、彼がとっても好きなんだろうなって思わせる、聴き手に共感を与える良いアルバム。
-----------------------------------------------------
Chick Corea: Live In Molde (2000,Universal)
1. Crystal Silence
2. Windows
3. Matrix
4. Duende
5. Armando`s Rhumba
6. Return To Forever
7. Bud Powell
8. Spain
Chick Corea(p), Trondheim Jazz Orchestra