調和した音世界と紙一重の狂気、のような怖さ、が快感につながるからドルフィーは好きだ。所謂フリー系の奏者と一線を画したように見えて、彼の音世界が孕む狂気は時間とか空間の歪みのようなものを書いてみせようとする偏執、のなかにある。そのような感覚を聴者に与える点では、モンクと双璧じゃないか、と思う。ゆっくりと音のアノ世、へ引っ張られるような気持ちよさ。
だから、ドルフィーを聴き出すと、少し気持ちの中が尖ってくることが分かる。
ドルフィーのそんな特性は、欧州の奏者との共演のときに明瞭に現れる。彼らの無機的な響き、そこにあってそこにない、ような在り方はドルフィーを音場の中心にしっかり据える部分があって、彼をしっかり聴くことができる。逆の意味でfive spotのライヴは楽しくなくて、普通のジャズのようにきこえてしまう。リトルの素晴らしいラッパ、が、屈折したような聴き方に馴染まないのだ。
今日、比較的早い時期のレコード盤が届いた。京都のレコード屋に教えてもらったのだけど、このアルバムにはRVGの刻印はない。原盤がデンマークのDebutだからだそうだ。Debut盤は恐ろしく高価(大阪のレコード屋で見た)で手が出ないのだけど、RVG録音・カッティングじゃない盤って、録音はどうなのか気になっていた。
届いて早速OJC盤(レコード)と比較したが、やはり鮮度が違う。A1のイスラエルのベースのリアリティに痺れた。今までよりも更にライヴ会場の空気を含め、濃厚に感じることができ、また、さほど高価でもなかったので、儲かったような気がした(関西人の表現)。
それにしても、ベースとのデュオ、カルテット、ソロ(!)など、様々なフォーマットで咆哮するドルフィーの音が飛翔していく感覚は、やはり素晴らしいなあと思った。
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Eric Dolphy: In Europe, Vol. 1 (1961, Prestige)
A1. Hi Fly
A2. Glad To Be Unhappy
B1. God Bless The Child
B2. Oleo
Eric Dolphy(fl, b-cl), Bent Axen (p on A2, B2), Chuck Israels (b on A1), Erik Moseholm (b on A2, B2), Jorn Elniff* (ds on A2, B2)