K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

新雪の峰へ(別山・チブリ尾根)・山に霊性を感じるとき


 東京からSさんが再びやってきた。6月の残雪期の白山以来の登山になった。いつも秋のチブリ尾根はいいや、って云っていたので。

 彼が来ると、食べる・呑むで賑やかしく、楽しい。そして、別山へ向かった。天候は雨から次第に回復。不安な心持ち。

 市ノ瀬に着くまでは雨。しかし、市ノ瀬の駐車場からは、うっすらと朝焼けした白山を臨むことができた。

 すでに尾根下部のブナの木の多くは落葉し、紅葉には遅かった。雨は次第に小降りとなり、初冬の明るい森のなかを歩くのは気持ちが良かった。ガスが薄くなると、釈迦岳や白山もちらほらと見え、濡れながらも楽しい登りとなった。断続的にガスに覆われながら降雪も。また景色が広がったり、目まぐるしく天候が変わる一日だった。

 前日の強い雨が、このあたりでは雪だったのだろう。釈迦岳が真っ白になっていた。

 チブリ尾根が楽しいのは、深い樹林帯の豊かさと、樹林帯から抜けた後の開放感。何回来ても飽きない。積雪と冬枯れの景色のコントラストが美しく、暫し見とれていた。このあたりから積雪。尾根上部の吹きだまりで30cm程度。たいしたことはなかった。

 避難小屋のあたりでは、いったん晴れ渡り、白山を見ることができた。美貌の山だと思う。また雲が飛び、別山もしっかり見ることができた。

ヴェールのような雲を纏った白山

抜けるような蒼天

チブリ尾根上部

 避難小屋から再びガスに覆われ、雪交じりの暗い空。もくもくと高度を稼いだ。チブリ尾根の上部を詰め、稜線に飛び出した瞬間、強い風が流れた。雲の中にいる自分たちをはっきり自覚した。そして、千切れる雲のなかに、スクリーンに映し出されたような蒼天がやはり流れていく。太陽が姿を見せ、強い日射しが射す。風が吹く方角を見ると、沸きあがる雲のなかから、白山が姿を見せる。息を呑む間もなく、天頂に映し出される雲と光のグラデーションがすごい勢いで流れていることに見とれる。気がつくと、再びガスのなかいた。寒い。我々が峰を遠望できる場所に立ったことを祝するが如く風が吹き、光が渦巻いた。山に霊性を感じるとき、があるならば、まさにそんなとき・そんな場所にいたことに強い幸せを感じ、手を合わせた。

 そして凍りついた稜線を辿り、別山に向かった。幸せな時間を過ごした。