K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

レコードかCDか、という程、単純でもないので

以下のツイートが目についた。

いい音で聴きたい、という本来的であり、かつ極めて主観的な欲求に対し、常に考えていることでもあり、ボクの感覚のメモ。

基本的には、主観的な好みの部分(あの感じがいい、程度の話)と、客観的な事実(再発盤にない原盤の良さ)のような部分があって、物理媒体であるレコードとCDの仕様に留まらない議論はあると思う。ボク自身は、1960年代以前の録音については、原盤を入手して聴く意味はあると思っている。音響装置に費用を注ぐ以上のコスト・パフォマンスが得られると思っているから。だからオリジナル主義というよりは、セカンドであってもオリジナルに近いものであれば拘りなく入手している。ジャケットもどうでもよい、そんな感じ。

今朝、ツイッターで呟いたことを編集すると、ボク的にはこんな感じ:

1950年代、1960年代のコロンビア、ブルーノート、プレスティージ、リヴァーサイドなどを聴くと、レコードの方が音が良い。そう思わざるを得ない。音圧が高く(目の前で弾いている感覚)、リアリティがあり、加工臭が少ないのだ。
一般論としてのLP、CDの物理媒体の優劣、比較ではないと思う。
・マスターテープの経年劣化問題、
・原盤作成時のイコライズへの録音技師、プロデューサー、奏者の関与、
そんな問題があり、確かにRVG刻印のレコードに代表される米盤の良さを、いつもリアルに感じている。
だからマスターテープの物理的な劣化問題もあり、後年の再発(レコード、CDに関わらず)には越えられない一線がある。また1960年代まで発売されていたモノラル盤は、音溝の振動モードに由来する、モノラル固有の音圧の高さもあり、レコード優位の要素となっている。
あくまで 1950年代、1960年代の米録音の話。ディスクユニオン 塙さんあたりの1970年代の日本のジャズ復刻CD(Think ! 盤)だと、マスターテープの物理的な劣化が小さいのか(テープ品質の向上か)、そしてリマスタリングがよいのか、レコードと比較し、同等以上のCDが確かにある。TBM盤なんかは、トリオ時代のレコードより再発CDのほうが音は良い。CDとレコードの比較という、単純な物理媒体の話ではない。
一例として、Bill EvansのWaltz for Debbyなんかは、オリジナルのモノラル盤の音圧は圧倒的で、エヴァンスの強いタッチに魅了される。日本ビクター盤のレコードでの音圧はCDとそんなに変わらない。ハイレゾ音源がやや良いくらい。でも音圧の弱さはどれも同じで、綺麗な音のアルバム、という印象が誇張気味。ブルーノートでのRVG録音は中音域誇張で音圧追求の典型であるが、ドル箱だからだと思うが、キング盤レコード、東芝盤レコード、近年のCDのいずれも健闘の印象があって、どれでもいいかなあ、とも思っている。
CDの音質は2000年過ぎに劇的に良くなっている印象がある。知り合いの技術者(音響系半導体の設計者、当時米国で活躍)に聴くと、音響処理システムのプロセッサーが32bit化した影響が大きい様子。イコライズ時のダイナミックレンジの縮退による劣化が減ったのではないか。
1970年代のPCM録音のレコード(当時のDENON、デンオンだよ)では、アナログ76cmマスターと比べて、音が綺麗だが、音の密度とか音圧が低い印象が話題になっていた。当時は16bit以下の処理だったのではないかと思う。これは初期のCDが物足りない、のと同じ話。
あとは再発時のイコライズ、マスタリングの質の問題。FantasyにおけるOJCでのレコード再発では、プロデューサーがオリン・キープニューズだったので、リヴァーサイドのレコードの音質の良さ、が言われていた。自分では聴いていないので分からないが、いずれ聴いてみたい。プロデューサーの関与が重要、というネタ。もっともOJCでのCDはイマイチ感があったが。
新譜のレコード買いは、自己満足のレコード偏愛、だと思っている。CD/レコードの音質論では決してない。異常なレコード愛の自覚はある。ただ「まともな」レコードでの音の柔らかさ、スクラッチ音を含んだ音響空間が好きなのだと思う。全く無意味なダメなレコードも勿論あるのだけど。特に最近の再発レコードは高価な割に、なので要注意かな、と思っている。

最近は物理媒体としてのCDに魅力は感じないので、極力、bandcampでのダウンロードで、データ入手するようにしている。CDプレイヤー(光学検知)という劣化(ビット・エラー)要因を入れる論理的な意味を見いだせないから、である。