K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1030) Gary Burton:The New Quartet

The New Quartet

[ECM1030] Gary Burton:The New Quartet (1973)
A1. Open Your Eyes, You Can Fly (Chick Corea) 6:40
A2. Coral (Keith Jarrett) 4:03
A3. Tying Up Loose Ends (Gordon Beck) 5:12
A4. Brownout (Gary Burton) 6:32
B1. Olhos De Gato (Carla Bley) 5:38
B2. Mallet Man (Gordon Beck) 7:11
B3. Four Or Less (Mike Gibbs) 6:10
B4. Nonsequence (Mike Gibbs) 4:30
Gary Burton(vib), Michael Goodrick(g), Abraham Laboriel(el-b), Harry Blazer(ds)
Design: B & B Wojirsch
Engineer: John Nagy
Mixed: Rapp, Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded on March 5 and 6 1973 at Aengus Studios, Fayville, Mass

https://www.ecmrecords.com/catalogue/143038750635/the-new-quartet-gary-burton

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[2019-12-28]
「偉大な1972年」の収録を終えて、1973年に。引き続き、様々なヴェクトルをアイヒャーとミキシングの録音技師Rappでこなしている。今度はジャズ・ロック。少し古めの。このアルバムの古いグルーヴ感、主には電気ベースのディストーションからくる、が気になるのだけど、それでもECM感を与えるのはさすがだ。

聴いていて思ったのは、RTFに続く、ECMの「米国市場攻略」アルバムだったのではないか。PMGの原型が宿っている。メセニーがバートンのグループ出身だから当たり前なのだけど。匂いが同じだなあ。ベースに気が取られて、以前はあんまり思わなかったのだけど。

ここで種を蒔いて、PMGで刈り上げた感じだ。

 

[2015-05-26] 古さを感じさせるのだけど
バートンのアルバムは、ECM以前のRCA/Atlanticを何枚か持っているのだけど、白人、それもやや荒っぽい感じの白人の感性のようなものを感じさせる芯の部分があって、リリカルな彼のヴァイブの周りに様々な音を割り付けているような印象がある。だから時として、そのような荒っぽさが、ベースとかギターに出ているような感覚がある。そんな荒っぽい音の奏者が入ったキースとの共演盤とスワロウ、コリエルらとの静謐な盤が入り乱れて、なんともまとまりがないように思う。

バートンのECMでの第一作である、このアルバムもまさにそんな過去の総決算のようだ。今までのロックへの接近を彼なりにまとめたもの。云い方を変えると、古さを感じさせるのだけど、魅力的な曲が多く(チックやキース、カーラなどなど)、その彩りに救われている。電気ベースの強い、乱暴なグルーヴが時代を感じさせる点で全くECM的でない。ヴェーバーかスワローだと良かったのに、と本当に思う。奏者のそのような感じを「米国録音」も相まって強調したのだと思う。

ただ、このアルバムではre-mixがそれなりに効を奏していて、やや残響感は浅い、のだけど、ECMの音にある程度はなっていて違和感はない。ヴァイブとECM音世界の相性が良いのだと思う。曲によっては(A2のキースとかB1のカーラ)バランスは丁度良く、まさにECM的な世界に入り込んでいて、後年に繋がっていくのだと思う。A1のチックの曲(書き下ろし、ではないだろうか。その後、プリムが唄っている)はベースを強調しており、Atlantic盤を聴いているような奇妙な感触なのだけど。

今のECMと違い、1970年代のアルバムの魅力は周縁に向けての遠心力であった、と思う。様々な音の風景を統一的な世界観に取り込んでいくような場面を見る妙味。今は「あの音世界」への求心力が強く、アルバムの数ほど沢山の風景は見せてくれない。そんな意味でバートンのロックへの指向をECM的に処理しましたよ、という処が美味しい。ただ、その幾つかは時間軸で痛んでいるのが残念だけど、PMGの原点のような音でもあり、失敗作だよね、とは全く思わないのだ。

 

[2011-02-09記事] この頃のECMのLPを聴いていると何だか切ない気持ちに

今日は雨の金澤。安アパートのベランダから垂れる雨粒をぼおっと見ている朝。少しだけ呑みすぎなのだ。薄暗い空のもとで揺れる竹林を眺めて時間だけが流れている。なんだか所在ない感じなので、オトを流し聴き。このダルイ感じが気持ちよくて、案外好きなのだけど。

感傷的になる理由はないのだけど、この頃のECMのLPを聴いていると何だか切ない気持ちになるのは何故だろうか。とりわけ、タウナーやバートンのような白人奏者の奏でる音の切なさが妙に染みてくる。キースのThe Survivors' suiteでもそうなのだけど、ハッとするような美しい音が画鋲のように蒔かれていて、時としてそれを踏んでしまうような。痛み、のようにも感じる切ない気持ちになるのだ。ここのところECMの録音を聴き直して、ある種の白人奏者固有(だと思う)の哀感(のようなもの)に、少しだけ弱いボクのメンタリティを知ってしまった。

このLP自体は独特のグルーヴ感のあるジャズ・ロックのアルバム。ジャズ・ロックって、もはや死語になっているけど、フュージョンという感じでなくて、やっぱり1970年前後の10年弱の期間に流行った8ビートのジャズは、ジャズ・ロックとしか表現できない。ビートの扱いが生硬で、8ビートを扱うこと自体が目的化していて、あまり洗練されていない印象が強い。同時期のR&B系の奏者(所謂アトランティック・サウンド)の豊饒なことと比べたら..しかるにゲイリー・バートンの1960年代末から1970年代にかけてのジャズ・ロックのアルバムは案外好きで、透明感の強いヴィブラフォンとグルーヴするリズムとの妙が楽しい。このアルバムは以前のDuster(RCA,1967)と比べて、やや荒っぽい印象があるが、ギターとベースの味が少し濃いからかな。DusterのLarry Coryell(g)とSteve Swallow(b)のほうが好み。このあとのPassengers(ECM,1977)でのPat Metheny(g)とEberhard Weber(b)も文句なくいい。このアルバムは匂い(あやうく臭い)の強いリズムの上だから、余計にヴィブラフォンの美音が輝いているような面白い印象があって、決して嫌いな音ではない。面白いね。動−静を組み合わせたような曲の印象もとてもいいし。

このアルバムはゲイリー・バートンの本拠地、マサチューセッツでの録音。そういえばバークリーの音楽教授を務めていたよね。ボストンのコプレイ・スクエアからプレデンシャルの方向へ,ボイルストン・ストリートを真っ直ぐ行くと、バークリー音楽院がある。好きな中古レコード屋があるから、ボストンに行くと必ず立ち寄るエリア。ここにゲイリー・バートンがいるのかなあ、と見ていたことを思い出した。アメリカのフォーク的な匂いと同時に、あのボストンの街角を想い出させるような洗練された感じもあって、ゲイリー・バートンは気になる奏者なのだ。

New Quartet-Reissue/Digi-

New Quartet-Reissue/Digi-

  • アーティスト:Gary Burton
  • 出版社/メーカー: Ecm
  • 発売日: 2019/05/17
  • メディア: CD
 

 

関連記事:

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2005/07/the-new-quartet.html

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何とも撮影しがたいジャケットで字を見せるため、色調を調整している。もう少し淡い色。
ジャケットのLC番号があり、またレーベルにMade inが入っているので、後年のプレス。
こだわる必要はないアルバム。