K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

山本剛:Misty (1974) レコードに固執する必要ないな、とも

山本剛: Misty (1974, Three Blind Mice)
A1. Misty (Erroll Garner) 7:13
A2. Blues (Tsuyoshi Yamamoto) 7:59
A3. Yesterdays (Jerome Kern, Otto Harbach) 6:09
B1. Honey Suckle Rose (Andy Razaf, Thomas Waller) 6:02
B2. Smoke Gets In Your Eyes (Jerome Kern, Otto Harbach) 6:00
B3. I Didn't Know What Time It Was (Richard Rodgers - Lorenz Hart) 6:22
B4. Angel Eyes (Matt Dennis) 4:42
山本剛(p),福井五十雄(b),小原哲次郎(ds)
Assistant Engineer: 大川正義
Recording Engineer: 神成芳彦
Cutting Engineer: 中村信
Producer: 藤井武
Executive-Producer [Executives]  福富昭典, 佐賀和光, 魚津佳也
1974年8月7日 アオイスタジオで録音
--------------------------------------------------------------
ディレク・ベイリーの次にこれを聴いている、のは何かヘンだけと、違ったジャンルの気持ち良い音。1980年頃に聴いても、もう時代から外れた(正確には直交した)音だったのだけど、だから今でも同じ感じで聴こえている。

何回も書くが、ディスクユニオンでのTBM再発は素晴らしく、レコードで聴く「あの音」を再現しているだけでなく、媒体の原理的なダイナミックレンジの広さ(CDのこと)の良さを十分感じさせる。今となっては、レコードに固執する必要ないな、とも思わせている(が、固執はまだ残っている)。

コロナが収束したら(するのか?)、ナマで聴きたいな。2013年下記記事に書いたもっきりやライヴには行けなかったし。

 

ミスティ

ミスティ

Amazon

 

[2013-01-25] 上手く誉められないのだけど、1/4世紀振りの再会

 上手く誉められないのだけど、山本剛のMistyはとても好きなレコード「だった」。キース・ジャレットを聴いたり、ビル・エヴァンスを聴いたり、レッド・ガーランドを聴いたりして感じる良さ、というものと随分隔たりがある良さ。ジャズという範疇で括られるのだけど、それはフォーマットの話しであって、型の上に載せられた音のcontexist(のようなもの)は海の向こうのモノではなくて、隣の酒場のものだった。これをはじめて聴いた30年前には分からなかった、この何か、が今ははっきり分かる。老けていく間に酒場も随分行ったしね、オトも随分聴いた。六本木のライヴハウスのピアノ奏者であった、ということが良く分かるような演奏。

 とりわけ、このレコードは1曲目のミスティのはじめの数秒で「名盤」(というより銘盤という感じ、美味しい清酒のようだから)であることが宣告される。古いオルゴールの蓋を開けたときのような、凍り付いた時間が溶け出すような感覚で、あの懐かしい音がゆっくり流れ出す。この仕掛け、を聴くだけで、ああ日本のジャズだよね、って嬉しさ。山本剛のピアノはとてもキュートで、ガーランド的なコロコロしたスイング・フォーマットのうえで日本の唄心が流れる、て感じ。分かるかな?当時のTBMのアルバムって録音は抜群にいいので、この溶け出した気分のままで気持ち良くA面を聴き終えてしまう。そしてその余韻で、今、文章を書いている。B面にひっくり返さなきゃ。

 ボクが持っているLPレコードは30年前に日本フォノグラムに移管されたTBMの廉価盤、当時1500円。立派なオリジナルじゃなくて、ペラペラジャケット。昨日の記事の後で何だけど、基本的にはオリジナル指向はないので、これで十分。実は1/4世紀振りの再会で、同じ廉価盤を最近入手した。全く同じ盤なので、25年振りに手元に返ってきたような感覚。

 25年前、ボクは横浜本牧ジャズ祭の運営ヴォランティアをやっていて、近藤等則を呼んだりして遊んでいた。そのなかで大切な仕事はチケットの店配布。湘南一帯のレコード屋やジャズ喫茶にポスターとチケットの店置きを頼んでいた。そのなかの一軒が北鎌倉の侘助。出身の京都のD大前にも同じ名前の店があって、何となく気になる店だった。そこにチケットを届けるようになった。炎天下の7月、VT250Fに跨ってのチケット配布。最後は杉木立の円覚寺前にバイクを止めて、侘助に入ってお仕舞い。そんな夏を何回も繰り返していた。ある夏、店主(?)と話をしていたら、このミスティをもう一回聴きたい、という。その気持ちがとても良く分かったので、手持ちのレコードを後日届けた。そして、なんとなく(仕事に気持ちを集中したからだろうね)、その後に行っていない。貸したままになっていたのだ。

 昨夏にレコード熱に罹ってしまって、殆ど忘れていたことを思い出した。そんな訳で再び手にしたくなった、という訳。だから改めて聴いていると、脱色し熱気もなくなってしまった夏の記憶、においも無くなってしまった汗の感触とともに、蝉が鳴く山門のあたりの光景がオマケのように想い出されるのだ。でもコレって、このレコードくっついた荷札としては、案外相応しいもののように思えるのだけどね。

 

追記:何でミスティを取り上げたのかというと、2月に山本剛が金沢に来るから。もっきりやのスケジュールをみたら、あれまあ、ということで。