K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Carla Bley : Ad Infinitum 今なお無限の夢をみたい気持ちを後押ししてくれる


とりあえず夏休みモードを終了し,仕事モードに切り替える積もりだったのだけど,今日は失敗.朝から,ごちゃごちゃ色々聴きたい曲を聴いていたら,すっかり沈殿してしまった.だから,今日は呑む日にしてしまった.そんな夏のお仕舞いの候なのだけど,最近,自転車を漕ぐときに口ずさんでいるのは,Carla Bley作曲のAd Infinitum .調べるとラテン語で,英語のinfinity,つまり「無限」.

Carla Bleyは所謂”Baby Boomer”のジャズファンのアイドル.一時は過激な音楽を指向していたけど,40年を越える楽歴を静かに振り返ると,実に美しい楽曲をジャズ界に提供していることがわかる.



Ad Infinitum は彼女の代表曲じゃないかな.不確実な現の世界に身を置きつつ,その現を肯定的に受け止めつつ,より明るい・希望に満ちた未来を仰ぎ見るような曲調.でも,大安売りの人生論や処世の話ではない.陰翳のある日々だけど,明日には違う世界が見えるかもしれない,のような仄かな気持ちを投影している.

この曲が世に知られるのは,Art Farmerのアルバムへの曲の提供から.Art Farmerの抑制的なトランペットのプレイが,Steve Kuhnのピアノ,Carlaの楽曲とよくマッチしている.

Art Farmer: Sing Me Softly Of The Blues (1965, Atlantic)
Art Farmer(tp) Steve Kuhn(P) Steve Swallow(b) Pete LaRoca (ds)    

Steve Kuhnのリーダ作にも入っている.うめき声で始まる演出過剰の大失態はともかく,独MPSの透明感溢れるレコーディング環境に,北欧のベース,ドラムと一緒のKuhnはとても艶っぽい.

Steve Kuhn: Watch What Happens! (1968, MPS)
Steve Kuhn(p), Palle Danielsson(b)、Jon Christensen(ds)    

Carla 自身の吹き込みは,現在の旦那Steve Swallowとのデュオで.二人のデュオは3枚吹き込まれているが,実にチャーミング.Carlaの魅力が生身で伝わるアルバムなのだ.難しい取組を沢山やって,なんか気難しい印象があるのだけど,これらで完全に払拭できた.

Carla Bley and Steve Swallow: Go Together (1993,Watt)
Carla Bley(p) , Steve Swallow(b) 

二人のデュオは幾つかyoutubeにアップされている.残念ながらAd Infinitumはアップされていないけどね.
http://www.youtube.com/watch?v=Cs3dVJXJ1YI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=rBOneuTpTNo&feature=related

あとはPhil Woodsの有名なEuropean Rythm Machineモノにも入っている. 

満月のもと夏は終わろうとしているが,今なお無限の夢をみたい気持ちを後押ししてくれるような,大きく広がった夏を愛おしむ気持ちと不思議と良くあう一曲なのだ.