K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Martha Argerich: Live From The Concertgebouw

Martha Argerich: Live From The Concertgebouw 1978-79(EMI)
1. Bach:Partita No. 2 In C Minor, BWV 826
2. Chopin: Nocturne No. 13 In C Minor, Op. 48, No. 1
3. Chopin: Scherzo No. 3 In C Sharp Minor, Op. 39
4. Bartók: Sonata, Sz. 80
5. Ginastera: Danzas Argentinas, Op. 2
6. Prokofiev: Piano Sonata No. 7 In B Flat, Op. 83
7. Scarlatti: Keyboard Sonata In D Minor
8. Bach: Bourree - English Suite No. 2 In A Minor, BWV 807

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このCDの後半,Bartók、Ginastera、Prokofievの流れは、是非ともFree Jazz、それもヨーロッパあたりの理屈っぽい音が好きなジャズファンには、絶対聴いて欲しい音が続く。

昨夜,このCDを寝るときにかけてしまった。気持ち良いバッハでスタート。昨日のKovacevichのベートヴェンといい、関心が広がることを警戒して、真剣に聴きたくなかったのだ。だから寝るときにかけてしまった。散々な夜になった。Bartókで眼が醒めて、夢うつつに聴き続けた。その浅い覚醒状態が続き、夢にうなされるような時間を過ごした。見知らぬ土地を人を探して彷徨うような嫌な感じ。辻から辻へ尋ね人を探し歩く疲労感だけが残った。安眠のための音楽じゃないことくらい分かっていた筈なのに....

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ボクのクラシック聴き始めでの「耳の穴開け」は、ArgerichのGaspard De La Nuit(夜のガスパール)を教えて貰ったこと。煌めく粒状の音に驚いて、惹き(引き、というより)込まれた。ということで、グラモホンの8枚組CDを買って、リストだのショパンだのを聴いてみたが、どうもRavel以外は響いてこなかった。ArgerichというよりRavelの魅力で聴いていたと判断。Argerichへの関心はやや薄れていた。だから安易に寝るときにかけてしまったのだ。

BachやChopinも気持ちがいい。ああ、これはHorowitzのMoscowライヴで作曲家に関わらず気持ち良く聴けて、演奏者に惹き込まれたときと同じ感覚だ。Horowitz、Michellangeriに続く感覚。やれやれ。

Bartók、Ginastera、Prokofiev(戦争ソナタ)のあたりは、20世紀そのものの音で、そもそも気持ちが合いやすい。安らぎはないが、感性の奥底への地下通路のような曲。

Bartókのソナタでは、曲が内包するドライヴ感が演奏のなかで鋭く吹き出していて、それが変化自在、そして微妙に揺さぶられている。そのうえに猛々しくも美しい旋律が乗っかっているのだ。だから曲が作り出す心象風景に想いを馳せるのではなく、変化し揺らいでいるドライヴ感に気持ち良くなってしまった。打楽器みたいに叩かれるピアノが美しく響いている。

知らなかったアルベルト・エバリスト・ヒナステラ(Alberto Evaristo Ginastera,1916年4月11日 - 1983年6月25日)はアルゼンチンの作曲家。とても魅力的な曲。南米の香が仄かにするのだけど、そこに多くを頼っていない感じで好感をもった。クライマックスではArgerichの粒状の音が我らが立つ大地から天蓋まで弾けていく。

セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ(Sergei Sergeevich Prokofiev、1891年4月23日 - 1953年3月5日)の戦争ソナタ)はAlexander Gavrylyuk (アレクサンダー・ガヴリリュク)の演奏をジャズ会の折に紹介して頂いていた。破壊力はガヴリリュクのほうが強いが、音の美しさではArgerich。戦争が主題であることを忘れて、美しく違和感の強い音の粒列を楽しむ。

そんな訳で悪夢をみても仕方がないよね。

同じ時期のArgerichのLive From The Concertgebouwには、あと2枚あるようだ。1つは協奏曲でボクは持っていない。もうひとつは借りて聴いたもので、RavelのGaspard De La Nuit(夜のガスパール)のライヴ版。スタジオ録音よりも大幅に短縮された、狂ったように高速に弾いている演奏が聴ける。弾けて仕舞いながら、音の破綻寸前で止まっているスリリングな演奏。

記憶力が減退しているなかでクラシック初心者を務めているので、備忘のためのBLOGなのだけど、振り返るとほんとうに馬鹿みたいと呆れてしまう。しかし、新しい音に毎日ぶつかる悦びはジャズ聴き始め以来の30年振り。仕方がないよね、と誰にでもなく自分に語りかける毎日なのだ。