K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

William Bolcom: Darius Milhaud Piano Music

William Bolcom: Darius Milhaud Piano Music (Nonesuch)
side-A:
Saudades do Brazil (1920-21)
side-B:
Trios Rag-Caprices (1922)
Le Printemps(1915-20)
 1975年録音、ジャケットはDarius Milhaudによる自画像(1964年)
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Darius Milhaud(ダリウス・ミヨー, 1892年9月4日 - 1974年6月22日)のピアノ曲をWilliam Bolcomという米人が弾いている。Milhaudはジャズ会で1920年代と思えない、実に現代的な曲(Saudades do Brazil )を教えてもらって驚いて、知った。このLPレコードも本当に良い曲で心地良く楽しめた。AB面があっという間に終わってしまう。20世紀のクラシック音楽で、よくジャズとの関係が云々されることがあるが、案外,非伝統的なものをジャズと云っているような気がする。ボクが聴いて、そんなフィーリングを感じないことが多いから。でもMilhaudの曲には、ジャズ的、というよりはジャズをはじめとする20世紀の街頭音楽(大衆音楽)と同じ空気を分け合っている感じを強く受ける。どこの街でもよい、パリ、ニューヨーク、東京、ハルピン、ブエノスアイレス...そこにはラジオがあって、同じ音空間が雑音混じりに流れてるのだ。そんな20世紀はじめの少し陰翳の強い、だから光が眩しい日々を感じさせる曲。仏人がみた新大陸の明るさに、微毒の陰翳がのせられている。

もっともっと聴きたくなったので、Alexandre TharaudのMilhaud集を注文してしまった。

演奏者のWilliam Bolcomは1938年シアトル]生まれの米人。裏ジャケットを読むと(米盤なので読める。先般,仏盤を沢山買ったので読めないのが多い)、11才のときワシントン大のprivate studentとして作曲とピアノを学び、20才から26才までMilhaud本人に師事、26才のときにスタンフォード大から最初のMusical artの博士号授与,となかなか華麗な方。アマゾンでみると、キャバレー音楽集などポピュラーピアノに近い分野で活躍した様子。

このLPレコードでは、Milhaudの曲がいいのだろうが、Bolcomの味がとても良いのではないかと感じている。所謂jazz ageの頃の空気を巧くのせているように思えてならない。Saudades do Braziを聴いていても、主題を少しずつ変化させ、その変化の端々に狂ってみせるような甘い空疎な感じを受ける。そんなところのピアノの響きが気持ち良い。ボクにとって、20世紀の音楽を聴くということは、こんな音を求め歩いていること、だと強く確信した。

それにしても、このLPレコードは70年代の米盤(最悪!)にもかかわらず、盤質まあまあ、音もとてもいい。気持ち良い曲・演奏をLPレコードで聴いているときの幸せ感は何モノにも代え難い。ほんとうに気持ちがいい。