金澤で今朝ボクがみたものは
暁の頃を過ぎて、犀川河畔
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昨夜から何かに強く誘われていた。だからビール一杯で帰途を急いだ。
さっぱり何だか分からなかったのだけど。まあ、とても空腹だったしね。
金澤に住んでから色々なものに誘われ続けている。
白山、別山、犀川、浅野川、伏見川、瀬の音、用水の音、蛍
川と河岸段丘をつなぐ坂から坂、坂と坂をつなぐ辻、広見、卯辰山
雪、櫻、金木犀の香、気まぐれな月や惑星たちが煌めく宵や曙
そちこちの料理屋、あのカウンタの席。
ボクはそんなものたちに誘われると断れないのだ。
夜明け前に目覚めて、ランニングシューズで飛び出したボクがみたものは、
冬の大気。
今朝から光を通す屈折率が変わったような感覚。
大陸に繋がった気団が、ツンと匂うような感触を運んでくる。
7月はじめに秋がみえたのだから10月には冬がみえるのだろう。
朝顔が未だ残る街を駆け抜けて、
犀川から上がってくる風の強さ故に吹上と呼ばれた坂の真中で、
お地蔵さんに手を合わせた。
暁というのに、背中から虫の音が宵と変わらず聴こえてきた。
霜になり損なった朝露が芝のうえで光っている犀川河畔を走って帰った。
それにしても、夏の残滓をようやく払ったのに、秋を纏う間もなく冬がやってくる。
この取り残され感って何だろうね。愚鈍だと、いつも思っている。
週末には山に登りたいなあ。雪が降る前の高嶺に。
暁の頃の釣り人達 犀川河畔