K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

蓮見令麻: Billows of Blue (2016) 在ったこともない記憶を辿るような

 

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 蓮見令麻のピアノとヴォイス。それにドラムとベースが寄り添う。蓮見が主宰する、このRuwehレーベルのアルバムの魅力は、アコウスティックな音響空間の柔らかさ、だと思っている。最近、多くの(全てでないが)ECMのアルバムに「作られた」アコウスティックな空間、のような感覚があって、多分に過剰な残響付加による、残念な気持ちがある。それに対する応え、のようなものがRuwehにあって、メタECM的な音響空間が気持ちよい。同じ感覚はノルウェイのNakama recordsにもあって、こちらはもっと硬質だけど。だから、Ruwehとか、NakamaのLPレコードはとても好きで、夜、針を滑らせるときの快感、が堪らない。このアルバムの収録時間を考えると、多分、レコードが出るのだろうけど、待ちきれないので、まずはFLACでダウンロード。

 ダウンロードで小さなトラブル(送料がadd)があったが、メイルでcontactに報告すると、対応頂け、今は問題ない。

 このRuwehのアルバムの魅力は勿論、音響空間だけでなく、ポール・モチアン菊地雅章の造った音、そしてそれを弾いた奏者達の息吹、のようなものを強く感じる点にある。過剰に音を出すのではない、一音、一音の必然性、のようなものを打ち込むように組み上げられた、間合いのような音の隙間を味わえるような音。

 このアルバムでは、前作でのオリエンタリズムの匂い、はなく、ヴォイスは在ったこともない記憶を辿るような感情を揺さぶる。ピアノの音は少なめだけど、一音一音確かめながら打つような印象の寡黙さ、ではない。むしろ、一音一音差し引きながら、有意の音だけを残した印象。ベースとドラムも、その空気感のなかで空間を紡ぐ。

 驚くような音を聴かせる訳ではない、のだけど、気がつくと背後から忍び寄って、いつまでも感情の奥に残っていくような、微毒の音。

  DLがRuwehでのBandcampでも可能。Ruwehの方が安価。ともにpaypalで決済可能。

Rema Hasumi - Billows of Bluewww.ruweh.com

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蓮見令麻: Billows of Blue (2016, Ruweh records)
1. Vers Libre I
2. Still or Again
3. Nocturnal
4. Vapors of Voices
5. Keep My Water Still
6. In The Mists of March
7. Billows of Blue
8. Vers Libre II
蓮見令麻(p, vo), Masa Kamaguchi (b), Randy Peterson(ds)
Recorded June 2016 at Oktaven Audio
Engineered by Ryan Streber
Mixed by Pete Rende
Mastered by Luis Bacque