ほとんど10年ぶりくらいに、しっかりとジャズのレコードをかける会を行いたいと思った。
ジャズを聴きはじめたのが1979年だから、早くも45年も経ってしまった。当時、人気があったピアノ奏者は、キース・ジャレット、チック・コリアそしてハービー・ハンコック。1940年生まれのハンコックが一番年長であるが、それでも39歳。今や、ハンコックは84歳、コリアはあの世へ。一番若いジャレットは脳疾患で半身不随。健在なのはハンコックのみ。ドラッグ癖の告白を著書で行っていた彼が残ったのは、何とも皮肉なことだ。
最初は、信じられないくらい典雅なピアノ・ソロで
1979 Herbie Hancock: the piano
日本制作のアルバム。先日の東京FMの「村上Radio」で「ダイレクト・カッティング」が紹介されていて、これもその1枚。改めて聴いてみると、その音の良さに痺れた。
Herbie Hancock (p)
1961 (Age:21) Donald Byrd Royal Flush (Blue Note)
デビューはドナルド・バードのバンドで。最終曲がハンコック作曲。
Donald Byrd(tp), Pepper Adams(bs), Herbie Hancock(p), Butch Warren(b), Billy Higgins(ds)
1962 (Age:22) Herbie Hancock Takin' Off (Blue Note)
早くも翌年にデビュー・アルバム。間違いなく早熟の天才。
Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp), Dexter Gordon (ts), Butch Warren(b), Billy Higgins(ds)
1963 (Age:23) Kenny Dorham: Una Mas (Blue Note)
ハンコックの打鍵ではじまる景気の良いジャズ。
Kenny Dorham(tp), Joe Henderson(ts), Herbie Hancock(p), Butch Warren(b), Tony Williams(ds)
1963 (Age:23) Herbie Hancock: Inventions & Dimensions(Blue Note)
ハンコックのピアノ・トリオでのアルバムは公式盤としては、日本制作で1つあるだけ。珍しいピアノ奏者だと思う。ブルーノートの諸作のなかでは、パーカッションが加わったコレが、トリオのフォーマットに最も近いかな。同時期の他のアルバムと比較し、ちょっと高踏的で好み。
Herbie Hancock(p), Paul Chambers (b), Willie Bobo (ds), Osvaldo "Chihuahua" Martinez(perc)
1964 (Age:24) Miles Davis: Four & More (Columbia)
ここで、当時の最高峰であるマイルス・デイヴィスのバンドへ。かなり激しい演奏の中で切れそうな糸を紡いでいくようなソロがスリリング。
Miles Davis(tp), George Coleman(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)
1965 (Age:25) Herbie Hancock: Maiden Voyage(Blue Note)
マイルス・バンドのトランペットをハバードに換えた編成ではあるが、全く趣が異なる。アルバム全体で統一的な曲想がジャズアルバムとして画期的ではないか。代表作。RVGカッティングからKevin Grayカッティングまで、レコード盤での音の違いを味わってもらう。
Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp), George Coleman(ts), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)
1968 (Age:28) Herbie Hancock: Speak Like a Child(Blue Note)
更にアルバムとしての完成度を高めている。ピアノ・トリオにブラスによるアンサンブルをつけた形だが、実に美しい。この後、もう1作をブルーノートに吹き込み、去る。電気楽器の導入からファンクまでの長い旅路に出る。
Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Mickey Roker(ds), Jerry Dodgion(alt-fl), Thad Jones (flh), Peter Phillips(bass-tb)
1970年代以降のハンコックはつまみ食い。1960年代末からのハンコックの変容は、Head Hunters(1973, Columbia)で結実。その活気が良く伝わるライヴを2つ。
1977 (Age:37) Herbie Hancock: V.S.O.P.
ニューポートジャズ・フェスティバルでのハービー・ハンコックの追憶セッション。D面がヘッド・ハンターズ。このライヴ、本当に大好き。
Herbie Hancock(key), Melvin "Wah Wah" watson, Ray Parker Jr.(g), Paul Jackson(b), James Levi(ds), Kenneth Nash(perc), Bennie Maupin (ts,ss)
1975(Age:35) Herbie Hancock:Flood
冒頭の処女航海からActual proofへの流れ、がまさにジャズの昂奮を伝えていて、当時(1979年頃)、あれはクロスオーヴァーだからね、と云っていた不明を、今更ながらら恥じる。アガルタを聴いた後に変わったな。
Herbie Hancock(key), Bennie Maupin(ts,ss,cl), DeWayne "Blackbyrd" McKnight (g), Paul Jackson (b), Mike Clark(ds), Bill Summers(perc)
1979(Age: 39) 笠井紀美子 Butterfly
当時の日本はこんなアルバムを作るほど勢いがあった。団塊の世代が有力な購買層になったから。そのお陰で、ハンコック自身が参加したヴォーカルでのカヴァー・アルバムができたのだから。素晴らしい。
笠井紀美子(vo), Herbie Hancock(key), Webster Lewis(key), Bennie Maupin (ss,ts), Ray Obiedo(g), Paul Jackson (b), Alphonse Mouzon(ds), Bill Summers(perc)
1983(Age: 43) Herbie Hancock: Sound-System
時間を追いかけるように、畳み込むようにアルバムを出していくのは、この時期まで。ある意味で煮詰まった印象がある。以降、ライヴは活発に続けているが、アルバムを出すペースはゆっくりに。流れを先導する印象は、次第に消えていく。プロデュースはビル・ラズウェルで、マテリアルや即興音楽系のメンバーが奇妙な味をつけていて、そこが大好き。カイザーや近藤等則がよい。
Herbie Hancock (key), Will Alexander(prog), Rob Stevens(key), D.S.T.( turntables), Henry Kaiser(g), Nicky Skopelitis(g), Bill Laswell (b), Anton Fier(ds), Daniel Poncé(perc), Aïyb Dieng(perc), Foday Musa Suso(perc, kora), Hamid Drake(perc), Wayne Shorter(ss), Bernard Fowler (vocal), 近藤等則 (voice, tp)
2001(Age: 61) Future 2 future (Verve)
最後は21世紀の入口
Herbie Hancock(key), Wayne Shorter (ts,ss), Charnett Moffett, Bill Laswell(b), Jack DeJohnette, Karsh Kale, Tony Williams(ds), Carl Craig, Grandmaster DXT, Rob Swift, A Guy Called Gerald (turntables, programming, beats), Gigi, Elenni Davis-Knight, Chaka Khan, Dana Bryant, mani Uzuri (vo)