K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

岐阜・柳ヶ瀬のあたり:綺麗に動態保存されたあの頃、そして見た夢


 仕事で岐阜に来ている。岐阜大は金沢大同様、郊外に隔離された大きなキャンパス。街中キャンパス育ちには、すこぶる居心地が悪い。それはともかく、柳ヶ瀬のアーケード街には驚いた。綺麗に動態保存されたあの頃、昭和が匂いたつ街。夜半まで随分とあるのだけど、商店街だから人影が少ない。知らない町の角を曲がったら、見た事があるような昔の光景のなかに滑り込んだような錯覚。春の柔らかい空気のなか、遠くから微かな笑い声が漏れてくるような大気の感触。

 街の印象って、そんな瞬間瞬間の光景が記憶のなかに溶け込むかどうか、で決まると思う。岐阜の街を歩きながら、同じような時候に訪れた仙台、松山、徳島、岡山などを思い出した。地方の古い都市の匂い。何だろう、街の大気が人肌の温もりのような。淡い夢のように記憶の底に沈殿した。

追記:そんな気持ちがあるためか、明け方に見た夢、普段は見ない夢、を久方ぶりに見た。

 ボクは独りで知らない街にいた。追われているような感覚があって落ち着かなかった。そして、そんな自分を斜め上から見下ろすような視点があって、生きた時間を過ごしているのか、全てがお仕舞になった後なのか、判然としなかった。ふっと古い木造の店舗のようなところに居ることに気がついた。薄暗い。夕暮れのような斜光のなかに浮かぶ自分が見える。

 遠くのほうから緑の着物をまとった人たちが鳴りものを手にやってきた。歪んだ硝子越しに見える。音もなく硝子戸が開き、つぎつぎと店に入ってきた。ボクは悄然と眺めていた。ボクのまわりをゆったりとした仕草で踊るように囲み、列が流れた。いつしか唄いはじめた。幾重にもオトコやオンナの声が重なり、詠じていく。同じフレイズを続けていく。声が高まり、その透明な響きに惹き込まれていった。少し低い温度の光が差し込んだような気がした。一幅の画をみるような場面が切り取られて意識に残った。