ジャズを聴く耳が旋回している、ような感覚。先日、Evan Parkerを聴いて、何かの「スイッチ」が入って、improvised musicが平気に聴けるようになった、30年振りに。という訳で、昔合わなかった音を聴いてみよう、と思った次第。
インパルス時代のキース・ジャレットもそんな「合わなかった音」のひとつ。実は、Vortex, Atlantic, Impulse!の彼のアルバムは一通り持っているのだけど、彼の美しいピアニズムを拾うためのもので、アルバムの出来、は論外という感覚。おもちゃ箱をひっくり返したような印象しか無かった。また、特に合わなかったのはテナーのレッドマン。あのうねうねとした音が嫌だった。例外的に、キースのAmerican Quartet(というがQuintetが多いよね)ではECMでのアルバム2枚が良くて、その濾過機能としてのアイヒャーって凄いな、と思った次第。
さて、聴いてみたのは、このFort Yawuh。ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ。思ったほど違和感がなく、楽しめる。レッドマンも大丈夫。このアルバムの音が40年の時間で、ボクのなかで熟れたような感じ。明らかにオーネットの音楽を消化して、美しいピアノの音との融合に腐心している様子が伝わる。その試みは概ね成功しているが、出来上がった「奇妙な味」が美味しい、とは限らない。そのあたりの微妙な感じが評価を難しくした、のではないか。
楽理のような難しいことは分からないが、モンク、オーネット、ドルフィーのような「奇妙な味の系譜」のなかのキース、という立ち位置もあるのだなあ、と再認識。ECMでの成功は、まさにその「奇妙な味」を脱臭した後の清潔感によるものだろうな、と思う。
それにしても最後の曲の美しさ、は何だろう。ECMでの彼とは次元、高みが違う美しさ。驚いた。
あとレッドマンはまさに奇妙な味付けの香辛料であり、必要不可欠な音を足していることも、分かった。セロニアス・モンクにとってのラウズ、セシル・テイラーにとってのライオンズも同じような位置付けでソロの善し悪しではなく、奇妙な味の厚みを増すために不可欠な香辛料じゃないかあ、と思うのだ。
(聴き直すきっかけは、H松氏のレッドマン好き発言と、この記事です。感謝します。)
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Keith Jarrett: Fort Yawuh (1973, Impulse!)
A1. (If The) Misfits (Wear It) (K.Jarrett) 10:10
A2. Fort Yawuh(K.Jarrett) 10:55
B1. De Drums(K.Jarrett) 11:57
B2. Still Life, Still Life(K.Jarrett) 8:38
Keith Jarrett(p, ss, perc), Dewey Redman(ts, Musette [Chinese],perc), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds,perc), Danny Johnson(perc)
Design [Album]: Ruby Boyd Mazur
Photograph: Al Kramer
Engineer [Engineering]: Tony May
Engineer [Mix Engineering Assistance]: Dominic Lumetta, Gilmar Fortis
Engineer [Mix Engineering] – Rick Heenan
Producer: Ed MichelRecorded in performance at The Village Vanguard, New York City on Feb. 24, 1973.
Mix engineering at The Village Recorder, Los Angeles.