K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Nakama: Grand Line (2016) レコード聴きの快楽、そのもの

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 昨日の「もっきりや」でのライヴの買い物。最近は記念品代わりに買っているのだけど、そんないい加減な動機をふっとばすアルバム。素晴らしい。

 僅かな音を使って、音響的な空間を精緻に組み立てていく、そんな作業の過程を見ているような気がする。そして社会の様々な側面に分断という遠心力が働き、憎悪や憤り、そして不条理な殺戮への不安、そんな21世紀のthe second decadeに響くファンタジーを奏でる、Nakama、Tsunagariそんな言葉に彼らの指向、が映っているように思える。

 ニューヨークの同世代の奏者達が奏でる音も、確かに同じような指向(嗜好?)で、僅かな音を使った音響的な空間を構築している。しかし、その音響空間構築の部品が異なる印象だった。ニューヨークの奏者達は、伝統的なジャズ、モンクやドルフィー、そしてそれらを解体してみせたフリージャズ、これらのパーツを丁寧に拾い上げ、再構築を行っている趣。

 Nakamaはimprovised musicで完膚なきまで解体された音の破片や残骸の美の側面、まさに音響的な美しさを集め、丁寧な作曲行為で再構築を行っている、ようにきこえた。だから、ある頻度で音の美しさや、楽器の弦や胴が震えるような感触だとか、そのようなものを楽しむ仕掛け、になっている。

 印象的だったのは、彼らが基本、楽譜を見ながら演奏していたこと。曲というフレームワークはあって、そのなかで演奏している。それが、曲としての全体の印象を作っている。レコードを聴いて、それを再確認することができた。ライヴでもその「楽譜」を見せてもらったが、演奏上での規範が書かれたもの。昔、ブラックストンのアルバムで見たようなもの。レコードの内ジャケットにも転載されていた。横書きのフローチャート

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 レコードは「かの」Rainbow Studioでの録音。技師はJan Erik Kongshaug。録音が悪い筈はない。そもそも奏者達が音響空間を強く意識して演奏しているので、ECMのような残響付加が強くなされていない。かなり聴き手に近い、強い音圧で美しい音を奏でる。レコード聴きの快楽、そのものなのだ。真空管アンプも暑苦しくなくなってきたしね。

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Grand Line

Grand Line

 

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Nakama: Grand Line (2016, Nakama)
A. Doremingo + Taiko__Grand Line (pt.1)
B1. Doremingo + Taiko__Grand Line (pt.2)
B2. The Sun__Uzumaki
C1. Nanika__Decks
C2. Tsunagari__Split&Curve
C3. Kusama__Events
D1. Suffering feat. Daily Choices Fail Compilation
D2. Daily Choices__Metro
PERSONELL
Adrian Løseth Waade (vln), Ayumi Tanaka (田中鮎美)(p), Andreas Wildhagen (ds), Christian Meaas Svendsen(b)
RELEASE DATE: 23rd May 2016
RECORDED: Rainbow Studio, Jan Erik Kongshaug
MIXED/MASTERED: Strype Audio, Christian Obermayer
PRODUCED: Nakama & Christian Obermayer

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サイン付き

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レコードには面の記載のみ。ミニマムな..