K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

近藤等則:Metal Position (1985) 闇を切り裂く刃物のような電気トランペット

近藤等則:Metal Position (1985, Polydor)
1.    Night Drive
2.    Cerezo Rosa
3.    Metalic Bamboo
4.    Black Dance
5.    We Know Smart
6.    Tea Girl
7.    Tricky Dicky fa fa fa
8.    Kaze
Toshinori Kondo(tp,vo), Reck(g,b), Taizo Sakai(g), Haruo Togashi (key), Rodney Drummer(b), Hideo Yamaki(ds)

youtube :
Metalic Bamboo: http://www.youtube.com/watch?v=o_EgxULaHSA
Tea Girl: http://www.youtube.com/watch?v=oL-lC2eH8Tc

先日,ふと浅川マキのヴィデオ「幻の男たち」を少しだけみた。1984年の京大西部講堂でのライヴ。そのときの気分は、もう少し前のマキさん、萩原信義さんのギターも聴きたかったので紀伊国屋での大晦日ライヴ(1971年)に変えちゃったのだけど。

この「幻の男たち」で全面に出てくるのは近藤等則。ボクも随分この近藤等則の音が好きで、随分とながいあいだ聴いている。1984年頃というと,まだジャズファンのなかでもあまり知名度はなかったけど。偏執的なFree Jazzファンの一部に知られていた、感じ。むしろ浅川マキさんのファンの方面で知られていたのかもしれない。

その頃だったか、立川の昭和記念公園で聴いた近藤等則の新しいバンド「近藤等則IMA」には驚いた。ロック・フュージョン系の奏者に激しいビートを打たせ、エフェクターを効かせたトランペットが天を衝くような音を出していた。ダンスミュージックではあるのだけど、聴いたことがなかった音。それまでの近藤、Improvised Musicという名の解体された音楽、もはやジャズですらない、という前衛ジャズの先っぽ、とは全く違う音楽。だけど、近藤のオト、ヒステリックで、自らを哄笑するようなシニカルな音世界はそのまま。そのまま激しいビートにのった快感。すっかり参ってしまった。闇を切り裂く刃物のような電気トランペットが哄笑する...

その「近藤等則IMA」の最初のアルバムが「Metal position」。LPジャケットの帯の惹句中沢新一チベットモーツァルトがヒットしたばかり、なのだから何とはまあの、時代の潤色。音のキレがとてもよくて、格好がよい。何回も何回もターンテーブルを回した一枚。いまでも聴いている。この後、近藤がTV番組やコマーシャル(資生堂など)でメジャーな露出が増えるまでアッという間であった。それにしても、たまたまTVをつけたら、田原俊彦のバックで吹いていて驚いた。それがyoutubeにアップされているのを見つけて、またまた驚いたけど。

http://www.youtube.com/watch?v=dZ825HueuYU

なんともバブル直前の飄々とした時代を思い出すのだけど。やっぱり田原俊彦って歌はヘタやね。

近藤等則:Fuigo from Different Dimension (1979, Bellows)

近藤等則の初リーダ作。ソロ。当時,近藤等則はメジャーなジャズ雑誌にも登場していなくて、活動の場が海外半分だったりして、案外知られていなかった。1980年頃に関西にやってきてボクのいた学校でも演っていた。共演はトリスタン・ホンジンガー Tristan Honsinger(1949−)。入口に自主制作(Bellowsレーベル:ベロ、舌のこと)のこのLPレコードが山積みだった。Bellowsレーベルは、その後ディスクユニオンの自主レーベルDIWをプロデュースされた杉山和紀さんがニューヨークで設立したもの。舞台は、楽器を弾くこともあれば叩くこともあり、叫んだり、舞台に寝っ転がったり、忙しい「プレイ」であった。Improvised Musicって空間共有して何となくわかる(といおうか、感じる)モノなので、録音されたものは正直しんどい。だから、この近藤の初リーダ作は、殆どジャケット観賞用。ニューヨークのビルの屋上、エンパイア・ステイト・ビルを背景に跳躍する姿は、当時の日本の気分そのもの。爽快。

1982年頃になったら、随分と知られるようになっていて、と云ってもまだまだマイナーなのだけど、ミシャメンゲルベルクMisha MengelbergのICPオーケストラの一員として京大西部講堂で演っていた。これも欧州の頭脳的前衛ジャズなのだけど、シニカルな味付けが好きで、ライヴはとても良かった。好みにあった。ジャズをひとつひとつのパーツに分解して、ほくそ笑みながら再構築したような、いたずらがタップリ詰まったような缶詰。このときの日本ツアーはDIWからLPレコードが出ていて、大阪と東京の演奏が収録されている。これは今でも聴くと楽しい。ライヴバンドとしてそれなりに人気がある「渋さ知らズ」の源流的なスタイルがここにある、と思う。

ICP ORCHESTRA:Misha Mengelberg & ICP Orchestra - Japan Japon (1982, DIW)
Misha Mengelberg: piano, voice
Han Bennink: drums, etc.
Peter Brötzmann: alto, tenor & baritone saxophones, voice
Keshavan Maslak: alto & tenor saxophones, voice
Michael Moore: alto saxophone, clarinet
Wolter Wierbos: trombone
Joep Maassen: trombone
Larry Fishkind: tuba
Maurice Horsthuis: viola
Toshinori Kondo: trumpet, voice

それにしても、1980年前後のことに想いを馳せると、とても冗長になるなあ。決して昔日の想い出、って感覚じゃないのだけど。