K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Pat Metheny: Kin (←→) (2013) 「自己完結されたメセニー世界」に連なる音


 まだ米Nonesuchに注文したLP/CDセットは届いていない。待ちくたびれた。早々に入手されている方々も多かろうと思うので残念。ちょいとオマケに引っ張られたのでね。

 だけど発売日にサイトからのDL案内が来たのでMP3で聴いている。本筋の話じゃないが、MP3音源って、あまり良くなくて、音の芯が抜けた感じ。そっちが気になって、やや気持ちが入りにくい。

  それにしても今回のパット・メセニーの新作は「聴きたかった音」そのものであり、きっと多くの人が満足するんじゃないかなあ、という内容。要はECMの後 半からGeffenの前半くらいのPat Metheny GroupやSecret storyのような、ある種の「自己完結されたメセニー世界」に連なる音、に聴こえるから。

 この音世界の魅力は、とても色彩感に溢れた音 を、ボクたちの想像力の少しだけ外で風のように流してくれること。だから距離感がとても近くて(昨日のヴィトウスみたいに宇宙まで行かない)、それでいて 音の風があたるのは指先だけで、手を伸ばしても掴みきれない広がりがある。音は大地の上を流れ、そこに棲んでいる人や鳥、動物の息吹を感じさせる。だか ら、音の温度は低すぎず高すぎない。気持ちよさの原点はそこにある。

 だからGroup soundとしての創り込み、創り込まれた音場のなかでの奏者の浮遊、それらが完全に溶け合って成立しているのだと思う。前作のUnity bandはspecial seeeion的なノリであったように感じて、だからクリス・ポッターのサックスは要らないな、と思った訳だ。彼のサックスが駄目なのじゃなくて、セッ ション録音だったら、メセニーにしっかり焦点あたっている方が楽しいからね。サックスのソロは余分だと思えてしまった。今回はGroup soundとしての創り込まれているので、勿論、ポッターのサックスも素晴らしい素材として、違和感なくはめ込まれている。素晴らしい。

  かつてのPat Metheny GroupやSecret story(のライヴ・バンド)では多楽器奏者(ナナとかペドロとか,Secret storyのライヴでは2人)が、パットの音楽として強烈に音の色彩感をつけていたように思う。だから今回のアルバムがかつてのPMGの延長線にあると思 えたのも、UnitybandのメンバーにGiulio Carmassi (知らない人)を加えたことによるのかもしれない。「あの」PMGのヴォイスが聴こえると嬉しいよね。帰ってきた、って感じで。

 そんな訳で、今は音がすかっとしないMP3で聴いているのだけど、今週末はCDに切り替えらっるといいなあ、と思っている。

 以下はNonesuchのプロモーション。ポッターがオーネット的なトーン出しながら、このPMG的音世界に溶かし込んでいるのだから、面白いなあ、とニンマリしてしまった。

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Pat Metheny: Kin (←→) (2013, Nonesuch)
   1. On Day One
   2. Rise Up    
   3. Adagia
   4. Sign of the Season
   5. Kin (←→)
   6. Born
   7. Genealogy
   8. We Go On
   9. Kqu
Pat Metheny (g, orchestrionics, synths), Chris Potter(ts, ss, b-cl, cl, fl), Antonio Sanchez (ds, cajon), Ben Williams (b), Giulio Carmassi (p, tp, tb, fr-horn, cell, vib, cl, fl, recorder, as, wurlitzer, whistling, vo)