K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Anatoly Vedernikov: バッハ・英国組曲(1985) 札幌で入手したソ連Melodia盤

 札幌のクラシックレコードの店で旧ソ連のMelodia盤の良さ、を教えて頂いた。なんとなく東西冷戦下のソヴィエトの録音技術は??だったので、勝手に音が良くない、と思っていたのであるが、違う、らしいのである。カッティング装置がトランジスタ化される時期が遅く、1970年代でも真空管増幅器が使われていたらしい、などなど。日本盤の録音が良くない(生気がない)、点については意見が一致したのだけど、店主曰く「高域と低域を規格で切っている」そうなのだけど、どうだろうか。興味津々である。山口レコード本では、レコード材料のレシピの違い、らしいが。

 ボクはロシアのピアノ奏者の陰翳を含んだ、ややもの悲しい演奏が好きだ。とりわけ、これからの暗い季節にはよく気分があう。日本海を挟んで暗い空を共有しているから、ではないと思うのだけど。とりわけヴェデルニコフは好きで、感情の底まで降りていくような強靱な力がもの悲しく降り注ぐような音の世界。

 さて札幌のレコード店で紹介頂いたヴェデルニコフはバッハの英国組曲。迷いがあって、一度店を出てから、何時間か後に再訪して購入。本当はスクリャービンとか20世紀に近い曲が良かったので。ただ試聴したときの音の良さが気になって、結局、なのだ。

 自宅に帰って聴くと、やはり、しみじみと音が良い。米盤のエネルギーに溢れた荒っぽい音、独盤の冷たく研ぎ澄まされた音、とは全く異なる、とても透明感が高く潤色されていない自然な音。今まで聴いていたECMの音が人工的に作られた美しい音と、思えるような。

 そんな音空間のなかで、易々と難しい音が流れ行く。そんな感じが心地よく、素晴らしい音と出会った、と思う。スクリャービンで聴くヴェデルニコフよりも、明るい感じがするのは曲の感じなのだろうな。