K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1008) Robin Kenyatta: Girl From Martinique (1970) 大分近づいてきた

Girl From Martinique

[ECM1008] Robin Kenyatta: Girl From Martinique (1970)
A1. Girl From Martinique
A2. Blues For Your Mama
B1 . Thank You Jesus
B2. We'll Be So Happy
Robin Kenyatta(as, fl, perc), Wolfgang Dauner(clavinet, p), Arild Andersen(b), Fred Braceful(ds)
Design: B & B Wojirsch
Engineer: Karl-Hermann Hinderer, Kurt Rapp
Producer: Manfred Eicher
Recorded on October 30, 1970
at the Tonstudio Bauer, Ludwigsburg.

https://www.ecmrecords.com/catalogue/143038750589/girl-from-martinique-robin-kenyatta-robin-kenyatta

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[2015-01-31]大分近づいてきた

[ECM1006]のダウナーと同時期のアイヒャー・プロデュース、トン・スタジオ録音の1枚。また同じく、CD化されていない。今のECMのなかで、受け入れられないモノがあるのだろうか、と思った、最初期のアルバム。

録音だけど、左端にケニヤッタ、右端にダウナー。かなり端に寄っていて、また後年ほどには残響が効いていなくて、くっきりと定位している。このあたりが、嫌いではないが、ECMの音に成りきっていない。音質はとても良い。真ん中にドラムとベース。このあたりの音の作りが、ダウナーの変態ジャケ盤[ECM1006]と同じ。約一ヶ月後のトン・スタジオ。だけど、着実にECMの音が組み立てられつつある、ようにも感じる(同時期のafric pepperbirdと音の感じが違うから、単にスタジオと録音技師の嗜好かもしれない)。大分近づいてきた。

ダウナーのクラヴィネットが、電子音の奇矯さを狙ったような効果を感じされること、アンデルセンのベースのディストーション(weather reportのヴィトウス風)がやはり時代がかっていること、このあたりがCD化されない理由じゃないかな。

そんなことはさておき、内容なのだけど、全般的にはアルトよりもフルートのほうが多いケニヤッタの演奏、とても好み。観念的になりすぎず、程よく肉体的な、でも温度は低めの音。なかなか気持ちよい。ドルフィー存命ならば、こんな感じかな、と思って聴いていた。浮遊したり、ビートを効かしたり、の繰り返しなのだけど、ややビート優勢。ディストーションが軽くかかったベースとドラムが叩き出すビートの感じはWeather Reportを一瞬思い出させる。実は好み。だけど、後年のECMの印象から、少し離れる感じ。何となく、しっくりこないのはダウナーのクラヴィネット。浮いているなあ。

大きな振幅でレーベルの在り方が揺らいでいる1年目のECM。大分と揺らぎが収まり、後年の方向へなんとなく導かれている様子が分かる1枚。CD化されてもいいんじゃないかなあ、とジャズ好きには思わせる1枚ではあった。

そして、このあたりの電子音の在り方が上手く消化され、とてもスムーズになったのが、まさにRTFじゃないかな。そんな少し後の開花、を強く予感させるような蕾みの一枚なんだと思う。

参考記事:

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2019/09/post-33091d.html
 

ボクの保有盤はLC番号が入っているので再発盤